蒼穹を仰ぎて

□月からの文
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真選組の屯所にて、神無は非常に戸惑っていた。

お茶を頂いて、お茶菓子も頂いて。合間に山崎が神無に話し掛ける。


「神無さん、良ければ俺のお菓子半分こしません?」

「あ、是非」


神無がそう答えると山崎は嬉しそうに微笑んで茶菓子を半分に切り分ける。

土方はその様子をただ静かに見守りながらお茶を飲む。

その瞳は優しかった。


(、、、どうしよう、こんなに居心地が良くて良いのかな?)


実際、お邪魔している、と言う自覚が消えてしまいそうな程に居心地が良い。

何となくその雰囲気を壊せなくて、神無は言われるがままに引き留められていた。


(、、、でも、日暮れ前には戻らなきゃ)


心配を掛けてしまう、と空を見上げる。

ふと其処に船が見えた。

古風な作りのその船を見た時、何故か胸の奥がざわつくような感覚がしたような気がして、彼女はその感覚を捕まえようと瞳を閉じた。









【吉兆を運ぶ鳥】










―――あの女と出会ったのは月の綺麗な晩だった。

随分と前のような気もするし、つい最近の出来事のようにも感じる。

確か、贔屓にしていた情報屋からの連絡が切っ掛けだった。

いつもは此方から訪ねなければ来ない女だったのだが、その日に限っては何故か連絡をして来たのだ。

と言っても電話口で、だが。


『あ、高杉さんですかぁ?私です、私〜情報屋のぉ、明花ですぅ』

「、、、お前か。何の用だ」


間延びした独特の口調に辟易して端的に問うと、受話器の向こうでくクスクスと笑う声が聞こえる。

気分を害した様子もなく彼女は続けた。


『“青鳥”って知ってますかぁ?』

「それがどうした?」


青鳥。宇宙でも有数の情報組織だ。

一般人に危害を加えない、と言う鉄の掟が有名なその組織の事は地球でも噂される程である。

尤も、半分以上は御伽噺として、だが。

しかし、女は楽しげに囁く。


『いえねぇ、高杉さんの依頼はぁ、、、きっと、青鳥に依頼した方が成果が上がると思いましてぇ』

「つまりお前には荷が重いってか」


そう言って挑発するが、女は何処吹く風、と言った様子で笑う。


『えぇえぇ〜私はぁ、地球の情報を青鳥に売ってぇ青鳥から宇宙の情報を買いますのでぇ、もしも早く情報を集めたいのならぁ、青鳥に御声を掛けると良いですよぉ?』


集められなくは無いですけどぉ、と言いながら情報屋の女は電話を切る。
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