MURCIELAGO〜いつか見た夢〜
□episode・03
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【本郷side】
「、、、行ったようだな」
薄い薄い気配を辿ってそう言うとはじめが応える。
「みたいですね。よかったぁ、怪我はしてないみたいで」
―――数刻前の事。
この船で行われると言う取引を潰す為に周囲を確認していたら突然目の前に達人らしき女が現れて身構える。
しかし、女は深く頭を下げてから此方を見た。
「若い空手家三人、、、貴方達がお嬢様の言っていた方ですね。お嬢様、確認しました。案内を開始します」
「お嬢様、、、?どういう事だ?」
警戒するように逆鬼が前に出るが女は意に介した様子を見せない。
「敵ではありませんので御安心下さい」
少しだけ微笑んでそう言うと、女は直ぐに笑みを消してこれから船で爆発が起こる事、そしてその混乱に乗じて逃げれば被害が少ないと言う事を手短に説明する。
「何故その情報を俺達に?」
「我が主の命により、貴方達が無事にこの船を脱出できるように御案内します」
「主、、、?えっと、お姉さんは本郷さんの“雇い主”さんの関係者ですか?」
「貴方達を雇ったのが誰かは存じませんので関係者かどうかは解りませんが、、、お嬢様は貴方達を御存知の様子でしたが」
「だから、そのお嬢様ってのは誰なんだよ」
逆鬼が苛立った様子で問うと女は嫋やかに微笑む。
話す気はないようだった。
しかしお嬢様、と呼ばれるような知り合いはそう多くなかった。
「、、、この前の」
「あ、本郷さんもそう思います?ですよね、他にお嬢様って感じの知り合い居ませんし」
「あ?いつの話だ!!」
一人だけ解って居ない様子の逆鬼だったが、はじめが「この前、巻き込まれてた女の子ですよ。神無ちゃん」と言うと思い至ったらしく首を傾げる。
女はその様子を見て少し困ったように言う。
「私はお嬢様の命令を遂行したいだけですので、お断りされてしまうと力尽く、と言う事になってしまうのですが、、、如何でしょうか?」
「いや、案内は頼もう。船の構造を教えてくれ」
「えぇ、勿論です」
女は頷いてまた手短に船の構造を説明する。
手短だが的確で解り易い説明をしてから女が「気を付けて」と揺れに備えるように言う。
身構えて居たおかげで揺れの影響は殆どない。
「さて、後は逃げるだけですが、、、此方の目的はお嬢様の安全の為に取引を潰す事で組織の勢いを削ぐ事ですので、もしも貴方達が殲滅を目的としていた場合は話が変わって来ますが」
「えっ、安全の為にって、、、狙われてるんですか?」
「はい。尤も、この取引を潰してしまえば後はお嬢様が出張る必要も無いのですが」