蒼穹を仰ぎて
□形無き想い
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「、、、包帯、自分で変えてんのか?」
「あ、はい。神楽ちゃんも手伝ってくれますし」
「、、、そうか。痛むか?」
「いいえ」
にこりと返す彼女に何となく「嘘だ」と思った。
傷まない筈がない。
最初に見た時も、その後もまともに歩けない程だったのだ。
夜兎と言えどそう簡単に癒える傷では無い筈。
けれど、それを追求する事も憚られて。
何となく彼女の指先を攫って自分の指先と絡めさせる。
ゆっくりと絡めて行くと神無が驚いた様子で俺を呼ぶ。
副長殿、ではなく土方さん、と。
(、、、本当に、別人みてぇだな)
いやではない。むしろ―――
「痛くねぇんだろ?」
なら、これくらい。
そう囁いて絡めた指先に口付ける。
ぴくりと反応した神無を見て何となく警戒されるのも悪くない、と思った時だった。
「副長〜お茶淹れましたよ〜」
気の抜けた声がその場の雰囲気を吹き飛ばす。
返事をしないでやり過ごそうかとも思ったが、神無が障子越しに見える山崎と俺を交互に見て泣きそうな顔をしているので仕方なく絡めた指先を離した。
「ザキ、お前減給な」
「んなっ!?何故ですかっ!?て言うか理由があっても酷い!?」
「うるせぇ。それより茶寄越せ」
「うぅ、横暴だ、、、あ、神無さん。お茶どうぞ」
「あ、ありがとうございます、、、山崎さん、、、」
にこっと笑う山崎は未だ挙動不審の神無に微笑む。
監察である山崎が彼女の様子に気付かない訳が無い。
解っていて入って来ている事は明白だった。
(、、、やっぱ減給だな)
完全に八つ当たりだと解っていながら俺は茶を啜るのだった。
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