君の知らない物語
□第一章〜01〜
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【ペルソナside】
ナナシに案内されてやって来た店では可愛らしい看板娘が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ!また来て下さったんですね、ナナシさん」
「いやぁ、君に会いたなってなぁ」
脂下がった顔で言うナナシ。
看板娘は慣れているらしくさらりと流して席に通してくれる。
「何になさいますか?」
「えーと、、、」
適当に側にあったメニューらしき物を見る。
この世界の文字についても勉強していたので取り敢えず目に付いた物を頼んでみる。
「私、このケーキとお茶お願いします」
「俺も茶でえぇわ。頼むね」
「かしこまりました!」
笑顔で去って行く看板娘を見送る。
可愛らしいフリルの付いた服は何処と無く縁遠いものに思えてしまう。
(、、、うーん、嗚呼言う可愛い子には似合うかもしれないけど、私はなぁ、、、)
ついでに言うと所持金の心配もある。
この世界のお金等持っていないので何か適当に換金して服やその他の物を買わなければいけない。
それから仕事を探して、と考え込んで居たら唐突にナナシが私の顔を覗き込む。
驚く私に彼は何でもない事のように言う。
「この後、服見に行かん?新しいのも欲しいやろ」
「え、あ、うん。でもその前に適当に質屋とか換金出来そうな所へ行かないと」
「いらんいらん!買うたるわ!!」
「うん、気持ちだけ貰っとく。多分だけど身に着けてた装飾品は売れると思うんだよね。珍しい物もあるし」
「あかんて。所持品は記憶が戻るまでとっとき。記憶が戻ってそれで要らんっちゅーなら話は別かもしれんけど、まだその時やない」
「、、、それじゃあ、出世払いでお願いします」
申し訳なさもあったが、それ以上に好意を無碍にする事が出来ず、茶化すように言うとナナシも「楽しみにしとくわ」と笑う。
何処と無く穏やかな雰囲気があって、ふと思考の端を何かが掠める。
『おぅ、楽しみにしとくわ』
全く同じ声、同じ仕草で、私は過去にこの言葉を聞いていた―――
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