乱あ ダーク系

□あまのじゃく
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「ねぇ、乱馬。ずっと前からあたしが思ってたことを話そっか?」

「んー?」
居間でのんきに格闘雑誌を読む彼に話しかける。


「もし乱馬との許嫁を解消出来るんなら、これ以上望むことはないのよね」


「....は?」

「あら?」
「....なにそれ?」
同じく居間にいた二人の姉も反応した。

「許嫁解消って....、そんなことあんたの一存で決められるの?」
となびきお姉ちゃん。

「そうよ。お父さんたちが何て言うか....。」


「....だよなー。今さら俺らの意見が通ったら今までこの凶暴女の許嫁だった俺の苦労は....」
皆まで言わせず、テーブルで乱馬を潰しておいてから。


「だって親が決めた許嫁なんておかしいわよ。結婚なんて本人の意志が一番大切でしょ。」
と今さらな事を今さら言うあたし。

「そ、そりゃそうだけど....」とかすみお姉ちゃん。

「まぁ今までもあかねから許嫁解消の話が出たことはあったけどねぇ。でも道場はどうすんのよ?」

「お姉ちゃんたちが乱馬の許嫁になればいいじゃない」

「はぁ?またー?」
「え…?」

「....おいおいおいおい?許嫁たって形ばかりのもんだろうが?まさか本当に結婚とかそういうんじゃねーし」
と乱馬がいった。

ほらね。やっぱり。

「形だけだからこそ嫌なのよ。そんなのに縛られたくない。恋愛だって結婚だって自由にしたい」

「....…なんだよそれ?」

「…ふーん。つまりあかね、あんたは乱馬君以外の男の子と恋愛したいってことね?そうなんだってー、乱馬くん。どうすんのー?」
とのなびきお姉ちゃんの問いに。

「べ、別に俺は....!ま、あかねみてーな色気のねー女が恋愛なんてもんが出来るか....ぐえっ」
また皆まで言わせず乱馬をテーブルで潰す。


「じゃあ乱馬はそれでいいわね?乱馬がいいなら、あたしもそれで構わないから。」

潰された乱馬。興味津々で成り行きを見守る姉二人。



ーーー嘘つきのあたしが吐いた、反対言葉の愛の言葉ーー。



最近は夢見が悪い。

いつからだろう。
乱馬とシャンプーが、
乱馬と右京が、
乱馬と小太刀までが....。
さらに酷いのは乱馬とかすみお姉ちゃんまでが、
乱馬となびきお姉ちゃんまでが
エッチしてる夢を見てしまう。

最初はあまりのショックで飛び起きては泣いた。
さらに女のらんまと良牙君が....。
....これは言わないでおこう。

夢の中の乱馬は本当に嬉しそうだった。
あたしなんか眼中になかった。




お父さんが騒いで止めてもあたしは許嫁解消を譲らなかった。
夢でもあんなに傷つくならあたしは自分から傷つく元凶と離れたい。

寸胴で不器用で色気のない許嫁がいなければ、乱馬だってじっくり好きな人を選べるじゃない。

乱馬が幸せになるために。

....自分を傷つけないために。


ベランダで春にはまだ早い冬の夜空を見ていたら

「おい」

ああ、またきた。

「....なによ」

「なに怒ってんだよ?」

「怒ってないわよ」

「おめーが許嫁解消なんて言い出すのは決まって怒ってるときだろ?」

「....怒ってないから」

じーっと屋根からぶら下がったまま私を見てくる乱馬。

ああもう。

こういうのが思わせ振りっていうのよ!

あたしにだけじゃないくせに。
女の子になら誰にだって優しくてはっきりしない癖に。
あたしがどれだけこの思わせ振りに期待して振り回されてきたか知らないでしょ。

天性の女ったらし?
悪気なしなのがさらにたちが悪いかも。


「ずっと前から思ってたのよ」

「....なにを?」

あんたが一人で敵と戦いにいってるときに見えてる景色とか。

本当はシャンプーとかなびきお姉ちゃんや右京のことをどう思ってるのかな、とか。

ーーー知らないことがあるだけで気が狂いそうーー。

「別に?乱馬がいなくても毎日満喫してるしね。乱馬のことなんか考えたりしてないし。」


「....かわいくねーな。俺だっておめーみてーな可愛くねー女と許嫁解消したらせいせいするぜ」

「それはこっちの台詞よ!」

「泣いてすがったってもう知らねーからな」

「誰が泣くかー!!」
2月の夜空に乱馬を蹴り飛ばしてしまった。



なんとなく言葉の裏の裏が見えたとしても、それは確実なものなのかな?


ーーー強く前向きに成長する乱馬と

成長せず止まったままの私。

二人の間の隙間は何で埋まる?


まだ素直に言葉に出来ない私は
天性の意気地無しだーーー。




あたし達が二人で作ってきた沢山の思い出は…一体何処に捨てようか?
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