人形(憑依)

□人形(憑依) 「転」
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放課後になると、

「らんまーっ!うれしいっ!あたしに会いたくて来てくれたのねっ!!」
ガバッ
と乱馬の胸に飛び込み抱きつくあかね。

「う、うわわっ」

それを見てどよめくクラスメート達と、
バキッ
とヘラを折る右京。

「あ、あかね、どうしたのかしら?」
「天道のやつ、えらく積極的になったなぁ」
ざわざわ。ざわざわ。



「ちょっとあかねちゃん、ええ加減にしいや。真っ昼間からベタベタと鬱陶しいんや!
乱ちゃんもきっと迷惑しとるでっ。なぁ乱ちゃん」

と右京が乱馬に抱きついたままのあかねに詰め寄った。

「え?へ?」
と煮え切らない乱馬。


「うるさいわね〜。自分がこう言うことを出来ないからって僻まないでよっ!」
あかねはフフンッとした顔で右京を挑発する。

「なにをぅっ、そんなのウチかてお茶の子さいさいやっ!」
そして、
ぎゅうっ
と反対側の乱馬の腕をとる右京。

ぎゅうぎゅうっと乱馬の上半身に抱きついては引っ張り合いだ。

「何だかすごい絵面ね」
「えぇ。真っ昼間からクラスの中で乱馬君を引っ張り合う許嫁二人についてなんて、なんてコメントしたら良いか分からないわ。」
ゆかとさゆりが渦中の3人を見てはおののいていた。


「しつこいわねぇ。乱馬、乱馬がハッキリと右京に『迷惑だ』って言ってちょうだい。」

「なんやて?それなら乱ちゃん?『あかねちゃんの方こそ迷惑だ』ってあかねちゃんに伝えてんか?」

「え〜。」
タジタジになる乱馬くん。


「ねぇ〜ぇ、らんま?あたし達、同じ家に住んでるんだから、当然いっしょに帰るわよねぇ?」
あかねがすりすりと乱馬の上半身に身体を擦り寄せ、甘えた仕草を見せながら、乱馬の耳元で囁いた。


ぞくぞくぞくっ。と身体にいけない電流が走る乱馬君。

「う、、、、うっちゃん、今日の所は、これで、、、またな」
乱馬は息も絶え絶えに興奮した様子を必死に隠しながら、悶えつつ右京に手を振った。

その端には「ふふんっ」とした表情で、ざまぁみろと言わんばかりの表情のあかねが右京を見下したように見ている。

「なっ。なっ。なっ〜〜。あんの女狐が〜。」
右京は涙を滲ませながら、わなわなと震えている。


しかしもう一人。いやもう一体。この一部始終をクラスの端から見ていて、
愕然としながらも、阻止すべくぎしぎしと乱馬達の側に移動しては、乱馬達の足元でウロウロする事しか出来なかったあかね人形がいた。



ーーーあの人形、あたしの身体で何を好き勝手な事をやってんのよ! ?あぁせっかく学校に来たのに、皆もう帰る時間じゃない?ーーー

とあかね人形が悶えていると、
しゅたっ
と1匹のクロネコがあかね人形の傍にやってきた。

「こんにちは。何かお困りですか?」
と、 そのクロネコがあかねに問いかける。

ーーえ?あたしに聞いてる?ていうか猫が話せるの?
、、、あれかしら、、『小さくなったり、人外になると動物の声が分かるようになる』っていう『ファンタジーあるある』かしら?


〰ーーーそ、そうね。あたし、人形に身体をのっとられて〜。かくかくしかじかで。 とりあえず人間に戻りたいの。 ーーー

あかねはジェスチャーを交えて必死に猫に訴えた。
声も出せないあかねが こんな複雑な内容を簡単に伝えられるとは思えなかったが、、、
「わかったよ。とりあえずあの人達を追いかけよう。僕の背中に乗って」

ーーー何故かばっちり伝わったようね!ありがとう。
とクロネコの背にまたがるあかね人形。




そして更にその全てを見ている占い師が階段の裏にいる。
「さてと、第2段階を発動しますか。」
占い師が呪文を唱えると、もくもくと煙が立ちのぼり、その煙がまたあかね人形を包むのだった。
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