ABC(R指定)

□A
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呪泉洞から戻り、あたし達は今まで通りの日常に戻った。


乱馬は今まで通りにライバルと切磋琢磨し、女に追い回され、ひな子先生や校長たちとドタバタ学園生活をしながら女装をし、、そんな中であたし達は進級した。

あたしの変化といえば髪が伸びたぐらい。
乱馬には大反対されたけど、あたしの髪はあたしの物であり、お洒落もしたい年頃なので、今は肩下10cmちかくまで伸びてきた。


女になった乱馬に胸のことや料理のことで馬鹿にされるのは、あたしの女らしさの足りなさもあるから、髪の毛でもう一度女らしさを出したかった。
あんないい加減男の好みなんて もう関係ない。


そんな中で なびきお姉ちゃんや九能先輩も高校を卒業し あたし達は高3になっていた。
お姉ちゃんは短大に進学して、今は教習所に通うのだと張り切っている。



うちの道場は、最近は小・中学生を相手に拳法を教えている。
小・中学生相手にはあたしでも指導できるから、バイト代わりにあたしが指導することも増えている。


乱馬の周りには、毎回強い敵が現れて、その度にあいつは色んなやり方で相手を倒していく。
正直 戦っている時はカッコいいと思っていた。
たまに見せる優しさにも 実は参っている。
ただそんな事を認めれば絶対にあたしを馬鹿にするし、さらに自信過剰になりそうだからなるべく本人には言わないようにしている。

そんな風にあたしと乱馬の関係は、特に変わらぬまま、高3の夏を迎えようとしていた。


そろそろ卒業後の進路を考えなきゃならない。
あたしは推薦での国公立の短大への進学を決めていた。
道場の跡取りになる、と小さい頃から思っていたから進学の必要性はないんだけど······
高校での成績は良かったから、進路指導の先生からは国立の有名な女子大も勧められたけど、道場の将来を考えたら短大で充分だと思った。


「急がないと遅刻よ!」
「うるせぇなぁ、分かってるよ」
と先に門を出ていたあたしを 乱馬が追い抜いて行ったので、あたしもその後を追いかける。


「乱馬!今日学校終わたら私とデートするね」
例の中国娘が自転車で乱馬にぶつかるように現れては、乱馬に抱きついた。


あたしは「いらっ」としたけど、この二人には怒っても無駄なので
「先行くわ」
と学校へ急いだ。


教室に入ると
「あかねおはよー」
とゆか達が声をかけてくる。
「おはよ」
と返し席につき、ゆかとさおりの手元を見た。

『女子必見!好きな男子とラブラブになる方法は?』
という、いかにもファッション雑誌の特集にありがちな見出しが目に入る。

今朝見た光景を思い出す。
シャンプーは昔から苛々するほど行動が過激だ。
乱馬はいっつもそれに振り回されているのか、拒絶出来てないように見える。
右京も、シャンプー程じゃないけど、未だに乱馬に愛情表現をしている。


あたしは激しくヤキモチを焼かされてばかりいるけど、二人みたいに素直な愛情表現が出来ない。
見る人が見たら 努力が足りないと言うのだろうか。

右京は自活していて料理は上手いし、シャンプーもウェイトレスをしてるし格闘の腕はあたしより上だ。
自分がひどく能力の足りない人間に思えてくる。
自己嫌悪を振り払うように 頭を左右にぶんぶんと振って、ゆか達の話に耳をそばだてて気を紛らわした。

「でもさぁ女から積極的に行くのってどうなの?」
「やっぱり男から来てほしいよね」
「そうそう、草食系とか最悪だよね······」


「草食系か······」
とあたしは小声で呟いていた。
さゆりが「そういえば今日も乱馬君はシャンプーに抱きつかれてたね······。あかねも大変ね」と気がついたように言ってきた。
「べつに······」
とあたしは苦笑してやり過ごした。


「あかねって平気なの?」
「うん、わたしなら耐えられないなー」
と二人は言う。
「そりゃあたしは······」と言いかけた時に、乱馬がひな子先生に追われながら教室に入ってきた。

「よっしセーフ!」と乱馬はヘラヘラ笑っていたが、すぐにひな子先生から「早乙女君!遅刻よ!」と闘気を抜かれていた。

「ゆか、その雑誌あたしにも後で見せてね」とあたしはこっそりとゆかに耳打ちをしてHRの準備を始めた。
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