魑魅魍魎の主
□異変を感じたら後回しせずに病院へ行きましょう
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「お茶淹れるくらい、大変じゃないから大丈夫だよ。」
この男はここ最近なぜかとてつもなく過保護になっている気がする。そこまで自分は体が弱く非力な覚えはないのだが、ここまで心配されると少し困ってしまう。
「そっか⋯じゃあ待ってる。」
「すぐ持ってくからね。」
台所に行くと、さっそくお茶の準備をし、お茶うけに冷蔵庫の中からあらかじめ買っておいた羊羹を切り、白いお皿の上に乗せる。
「よし!」
支度ができたところでお盆に並べたそれを持ち、リクオの待つ縁側に足を進めようとしたのだが、ぐにゃり、と視界が歪む。
「あ、れ⋯?」
手に持っていたお盆を落とし、湯呑みが割れた音が聞こえたが、その音が遠い。ぐらりと揺れる体に、なにか側にある物を掴もうとするがそれは叶わない。
そのままぷっつりと、意識が途切れる。
「⋯ん、」
「彩菜!!?」
ぼんやりとした視界に映ったのは、今までに見た事が無い表情をしたリクオの顔。
どうしてそんな顔をしているのか、理解ができずに、そっと手を伸ばす。それに気付いたリクオはその手を握り、優しく、彩菜の頭を撫でた。
「りく、くん、私⋯。」
「台所で倒れてたんだよ、それを雪女が見つけてくれて⋯。今鴆君呼んだから、もう少しここで待ってて?」
倒れた、そう言われて思い出そうとするが、頭が回らない今の状態ではある一つのことしか思い浮かばず、気付けば声に出していた。
「ごめんなさい。私、りくくんの湯呑み、割っちゃった⋯。」
「いや!!今は湯呑みより彩菜だからね!?それに、ずっとここ最近、体調悪かったんでしょ?」
「気付いてた、の?」
「情けないけど、僕じゃなくて母さんが。でも、今日は朝から微熱あったよね?」
「う⋯。だって、私一人だけ、寝てるのは。」
「体調が悪いなら話は別になるでしょうが!!」
「あう!!」
額に軽くでこピンを入れられ、すぐに撫でられた手はとても暖かくて気持ちよかった。
「彩菜が好きで今の仕事をしてるのは理解もしてるし、応援もしてる。だけど、体を壊すほど働くのは、やめてほしい。」
「うん⋯、心配掛けてごめんなさい。」
「謝らないでよ。謝ってほしくて、言ってるんじゃないんだからさ。」
うん、と力なく頷いた、自分もあんな仕事に追われるのはこりごりだ。
「リクオ様。」
「氷麗、」
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