魑魅魍魎の主
□名は体を表す、まさにその通り
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「その、りくくん、ちょっと、話したい事があるの。」
「?なに?」
「あのね、」
夕方の気持ちの良い空気の中、二人揃って縁側にいた。リクオは彩菜に膝枕をしてもらっている。その状態で、一年を通して咲いている桜を眺めていたのだが。
リクオは横向きになっていた体を仰向けに直し、彩菜を下から見上げる。
彩菜の言葉を待っていたその時。バタバタと遠くから騒がしい声と足音が聞こえた。二人は目を合わせ、苦笑いを浮かべると、リクオは体を起こし待ち構える体勢に入る。
「母さん!父さん!ただいま!」
「ただいまー!」
「はい、おかえりなさい。」
小学三年生の息子と、小学一年生娘。この二人は彩菜とリクオの子供だ。
彩菜は息子である千暁を受け止め、リクオは娘の芙月を抱き止める。ランドセルは、既に自室へ置いてきたらしい。足をばたつかせている芙月の頭を、リクオが優しく撫でた。
「ねぇ母さん!」
「なぁに?」
「今日学校の宿題で、自分の名前の由来を聞いて作文にしなきゃ駄目なんだ!だから、教えて!」
「あら、そんな面白い授業があるのね。」
と言いつつも、彩菜自身もいつだったか経験した覚えがある。学年は思い出せなかったが、母に尋ねた時は心底ワクワクしたものだ。
「千暁の名前はね、りくくんが決めてくれたんだよ?」
「父さんが?」
「そう。今まで話したことなかったっけ?」
「聞いてない!」
大切な子供に名付けた名前なのだ、たくさん候補を考えていたのだが。結局、生まれた瞬間に顔を見てリクオが付けたと後々聞いた事はよく覚えている。
それでもちゃんと素敵な意味が込められてるのだが。
「千暁はこれからたくさんの人や妖怪に関わっていくだろ?」
「うん。」
リクオの祖父や父であるぬらりひょんと鯉伴と同じ、いや、それ以上に。子供の世代へ変わる頃には、また世の中の空気も変わっているだろう。
そんな中でも、変わらずに自分らしく、真っ直ぐと己で選んだ道を歩いてほしい。そんな願いとーーー。
「その分、たくさんの事が起こるだろうけど、それでも前に進むことを止めない、そして周りへ光を当てて道を示せるような。そんな人と妖になれるようにっって。」
「父さんって、欲張り。」
「はは、よく言われる。」
リクオが欲張りだったからこそ、彩菜も奴良組の三代目の妻として収まっているのだが。苦笑いを浮かべつつも千暁の顔を覗き込む。
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