夢を追う人
□普段から文明の機器に頼りすぎていると、いざという時に困るので気を付けましょう
2ページ/7ページ
「ーーーここ⋯、どこ⋯?」
全く見知らぬの周囲の景色に、どうすればいいか全く分からない。親の許可が下り、大学が長期休みに入っていたため、このアメリカ旅行というものが実現したのだが。
出国する数時間前の、自信満々だった自分も全力で罵倒したい。高くなっていた鼻を折ってやりたい。小学生レベルの英語で、どうにかなると思っていた自分の落ち度だ。
ちなみにアメリカに行くことは、彼氏である佐藤寿也になにも言っていない。急に来て驚かすつもりだったのだが、それが裏目に出てしまったようだ。
「とにかく、ホテルまで行かないと⋯。」
タクシーに乗ったのだが伝え方と発音が駄目だったらしく、全く違う場所に連れてこられてしまった。まずは空港まで戻らないとどうにもならない。
涙目になりながらも、キャリーケースを転がし必死に歩く。車どころか、人っ子一人通らないこの場所では、助けを誰かに求めることもできなかった。
「そうだ⋯!私、今、文明の機器持ってる⋯!」
ポケットから携帯電話を取り出し、電話をかけようとしたのだが、指の動きが止まる。なぜか圏外だ。
「なんで!?アメリカなのに!!むしろアメリカだから日本の携帯使えないの!?」
がっくりと肩を落とし、そもそもかける場所は、寿也以外にいないだろうと諦める。
それにしても携帯電話が使えないなんて計算外だった。
ホテルの場所の地図は幸いにも印刷し、紙面として手元にあったからよかったものの。今の彩菜には連絡手段が全くない状態である。
「というか⋯ここから歩いたら、空港までどれくらいかかるんだろう。」
下調べをしてこなかった、完全なる彩菜のミスだ。
とにかくこのまま唸っていても仕方が無い。歩こうと必死に足を動かしていれば、前からタクシーが走ってくるのが見えた。
それに目を輝かせた彩菜はピッ!と勢いよく手を挙げ、タクシーが止まるのを待つ。が、素通りされた。
「えぇ⋯嘘⋯。」
ちらりと見えたが、タクシーにはもうすでに男の人が乗っているように見えた。確かにそれでは止まってくれないよなぁ、と思いつつ、肩を落とし再び歩き出そうとしたのだが。
「おーい!アンタ!!」
「え。」
周囲を見回し誰もいない。自分か?と、声が聞こえた方に目を向ければ、先程のタクシーが止まっていて。日本人男性が手を振っている。
「私?」
「アンタ以外に誰がいいんだよ。女が一人でこんなところでなにやってんだ。」
「その、英語が全然伝わらなくて⋯ホテルに行きたかったのに、ここの近くで降ろされて⋯でも全然違う場所で⋯携帯繋がらないし⋯言葉通じないし⋯誰もいないし⋯。」
潤み出した彩菜の目を見て男は顔を引き攣らせる。彼女の言っているそれはいまいち要領を得ていなかったが、なんとなく散々な目にあったんだろうなと悟った。
「どこまで行きてんだ。」
.