暗殺者と怪物
□隠し事をするには、先の先の先の先まで見据えなければならない
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「眠い⋯。」
ここ数ヶ月、忙しく寝る時間がどんどん遅くなっているため、欠伸が止まらない。目的が決まっているため、しばらくの我慢なのだが、それでも眠気は我慢できない。
「彩菜ー。」
「ひっ!?」
ぼんやりと考えているところを、背後から急に肩を置かれ、彩菜は咄嗟にその手を振り払う。
「あ⋯。」
その振り払われた男の顔を見て、ほっと安堵の息を吐き出す。
「カルマくん⋯。」
彼は大学三年生の五歳歳上である幼馴染みだ。昔からなにかと自分の事を気にかけてくれていて、高校受験の追い込みも、頭の良かった彼に家庭教師を頼んだこともある。
「なに?その反応。なにかあった?」
「なにも、無いよ?」
「それならいいけど。」
「あははは、ごめんね?痛かった?」
「別に痛くはないけど。」
彩菜はニコニコと笑顔を浮かべながら、背中には冷や汗を流していた。この男にはなぜか、昔から隠し事ができない。その原因を探ろうとしても、いつも上手くはぐらかされてしまうため、結局解決ができないのだ。
とにかく、この事だけは、バレるわけにはいかないのだ。あと目標までもう少しなのである。
「彩菜ちゃーん!これ五卓ね!」
「かしこまりました!」
店長から渡された皿をトレンチと呼ばれるお盆に乗せ、せっせと運んでいく。今日は平日のため、静かな方だが、金曜日、土日と祝日は桁違いの忙しくなる。
そう、彩菜が必死に隠していたものはアルバイトをしているということである。しかも、反対される事が分かっていたため、両親に黙った上での居酒屋であった。
居酒屋を選んだ理由は、短時間で高校生ながら高時給が給料として振り込まれるため、選んだのだが⋯。思っていた以上にキツい。
宴会用の皿は重く、ジョッキも最高両手に四つずつ持つとぷるぷると震える。おまけに酔っぱらいの相手をするのはとてつもなく面倒なのだが。
それでも人間関係がまだ楽であり、常連客とも顔馴染みになってきたため、今はまだ辞めるつもりがない。
昨日はカルマに悩みの一つを指摘され、ヒヤリとしたが、上手く交わすことができたのだ。今はなにも考えるべきではないと頭を左右に振る。
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