魑魅魍魎の主
□初デートの際に観察をすれば新しい一面が見れます
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「え、彩菜ってデート行った事無いの!?」
「いや、無いことは無いよ?公園とか、近所歩いたりとか、一緒に買い出し行ったりとか⋯。」
「それデートじゃないでしょ!!ただの買い物じゃん!!散歩じゃん!!」
友人に突っ込まれ、困ったように眉を下げる。
「でも、基本的にいつも忙しいし⋯。時間があったらその分どこかに行って疲れるよりも、ゆっくり休んでほしいから⋯。」
「寂しくないの!?」
「うーん⋯。」
「映画とか!!遊園地とか!!海とか!!!山とか!!!」
「そう思ってたこともあるし、考えたこともあるけど⋯。今はそれ以上にりくくんと一緒にいられるだけで幸せなの。」
「っ⋯!!なんてっ⋯!!どこまで健気なの!!彼氏、彩菜に甘えすぎでしょ!!!」
「そんなことないよ。」
彼と出会ったのは中学一年生の春。付き合いだしたのは中学二年生の春。出会ってから今ではもう十年近くになる。
世間一般であるデートというものをしなくても、大切にしていてくれることはわかる。それでも、十代の頃は多少の不満はあったものだ。
「彩菜から、誘ってみれば?」
「うーん、でも特に行きたい所もないし⋯。」
「別にどこでもいいんだよ!!買い物でも遊園地でも水族館でも!!」
「そこまで拘ってないから⋯。」
苦笑いを浮かべ、当人よりも熱く語っている友人。きっとこれは温度が下がるまで時間がかかるだろう。
ーーーその会話を聞いていた一つの黒い影。たまたま彩菜の姿を見かけ、声をかけようとしたのだが。気になる会話をしていたのでつい聞き耳を立ててしまった。
「デート⋯か⋯。」
よく考えてみれば、昔から彩菜は全くと言っていいほど我儘を言わない。
お願い事をされることはあっても、精々それは、『怪我をしないで。』『ちゃんと帰ってきて。』『抱きしめてほしい。』など。
三代目を継いで、慌しく、忙しかったと言えば逃げになるだろうが―――。
「よし!!」
その足で本屋に向かい、数冊、雑誌を購入すると本家に戻り、休憩していたのであろう、雪女と毛倡妓がいた部屋の中に入る。
「リクオ様、いかがされました?」
「うん。あのさ、少しだけ、聞きたいことがあって⋯。」
「??私達でよければ!!なんでもお答えいたしますよ!!」
「ありがとう!!その、女性って、デートに行く時ってどこがいいのかな?」
「「え、」」
「ずっとどこにも、二人だけで行ったことないからさ、驚かせたくて⋯。」
「わ!!きっと彩菜様もお喜びになりますよ!!」
「サプライズですね!!素敵じゃないですか。私達でよければご協力いたします!!」
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