自由の翼

□幼い頃何度も練習したものは、中々忘れない
1ページ/4ページ




今日は満月のためか、やけに明るい。

月明かりに照らされ、本棚の上から三段目、右端にある白い封筒が目に入った。

それは、万が一彼女の身になにかあった時、読むようにと言われていた物だったと思い出す。

この部屋は彼女、彩菜の自室であり、勝手に人の物を漁るのはどうかと思う。一瞬思いとどまる気持ちもあったが、今、文句を言う彼女はここにはいないのだ。

部屋のランプを付け光を灯すとリヴァイはベッドの上に仰向けで寝転がり、しっかりと封をされていた封筒を開け中身の便箋を取り、広げる。

そして固まった。

便箋に記されていた文字は、彩菜と自分で考えた文字。この文字を読むことができるのは、世界で二人だけであるためだ。

綺麗な文字で書かれている文章を指でなぞる。

存外、一度覚えた文字は中々忘れないらしい。当時は二人だけの秘密の言葉として、散々彼女に覚えさせられた事が要因の一つであるだろうが。

もし自分がこの文字の意味を忘れていたらどうなるのか疑問に思う。この手紙を読めなかったとしたら、彩菜の想いを読み取ることはできなかった。

「俺の記憶力に助けられたな。あのアホは。」

小さな悪態を付きつつ、文字から、文章全体へと視界を広げた。





拝啓、リヴァイ。

リヴァイに対して、こうして改まって話をするのは少し恥ずかしい。それでも、

きっと私はもう生きていないので、それを感じる事は無いと思います。

約束を守れなくて、ごめんね。

思えば地下街でリヴァイに拾われてから、十年以上。リヴァイは本当に私の事を大切にしてくれていました。

子供が一人で育つ事が難しい環境下で、私が大人と分類される年齢まで生きてこられたのは、リヴァイのお陰。

まだ小さかった私に付き合ってたくさん遊んでくれた。この文字も一緒に考えてくれて、本の読み聞かせ、ごっこ遊び。リヴァイからしたらなんともなかった事だろうけど、本当に嬉しかった。

本当はもう少しリヴァイや調査兵団の兵士としていたかったけれど、誰も困らせたくないので、潔く諦めます。

そして、リヴァイにどうしてもお願い事があります。本当はこの封筒の中に収まりきらない程あるけど、書く事も読む事も大変なので、三つに抑えます。

まずお願い事の一つ目。

ちゃんと寝て、ご飯も食べてください。リヴァイはちゃんとお風呂には入るけど、忙しくなると睡眠も食事も疎かにするので心配です。

ハンジやエルヴィンの事言えないよ。目の下の隈が少しでも薄くなってね。

二つ目のお願い事。

リヴァイは口の悪さと目付きの悪さからよく誤解されてます。本当はとても温かくて優しくて安心できる存在なのに、それほとんどの人が知りません。

少しずつでもいいから、表情が優しくなって、話し方も優しくなればいいと思います。

そうすれば、きっといろんな事が変わってくるよ。


.

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ