自由の翼

□八つ当たりはできるだけやめましょう、と言うよりもいけません
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「やっ⋯やっと終わった⋯。」

地獄のように、かなり高く積み上がっていたこの書類の山を一人で片付けた自分へ涙を飲み、固まった体を大きく伸ばす。

己の地位が上になるにつれ増える書類に対し、本気で殺意を覚えていたが、ようやく終わった開放感にそれを忘れる。

「わ、もうこんな時間⋯。」

数ヶ月に一度、兵士に対する慰安パーティが行われるのだが、それが今日だった事を思い出し大きく溜息を吐く。こんな時間ではろくに酒も料理も残っていないだろう。

しかし後々、顔さえも出さずにいればハンジにどつかれてしまうことは容易に想像がついてしまう。

本心はとてつもなくシャワーを浴びてベッドへダイブしたかったが、脱いでいたジャケットを羽織り執務室を出た。

「うわ⋯相変わらず、凄いね⋯。」

もうパーティーも終盤間近なのだろう、床には爆睡している者や、いまだに飲んでいる者、そして絡んでいる者など、大勢居る。

彩菜は自分が酒に弱い事を自覚済みであるため、余程の事がない限りキャパオーバーする程飲まない。それが幸いしてか、災いしてか、いつも宴の後処理に回るのだが。今回は料理を全く口にしていないため、少し理不尽に感じてしまう。

だが、誰かがしなければきっと明日の業務に響いてしまうと、腕を捲り、空いているグラスや皿を一気に下げていく。これはもはや体に染み付いてしまった習慣だ。

「ちょっと彩菜ぁ!!!やっと来たのにどうして片付けしてるの!私と飲もうよ!!」

「え、ちょ、ハンジ⋯!!」

腕を急に引かれ、ポスンとそのままハンジの太腿の上にお尻を付かされる。持っていたグラスを落としそうになってしまったが、それは持ち前のバランス能力で堪えた。

「ハンジ、危ないよ!」

「いいからさぁ!飲もうよ!」

「私じゃない人に絡んでよ、エルヴィンとか、ミケとか。」

「あの二人は隅っこで話してるだもん、女は入ってくるなって。つまんない。」

「⋯じゃあモブリットは?」

「潰しちゃった☆うちの班は全滅☆」

「⋯⋯ナナバとリーネはどこ行ったの?」

「今日二人は不参加、街に用事があるんだって。」

その用事にこの問題児を一緒に連れて行って欲しかったが、なにか理由があるのだろう、頭が痛い。

「彩菜ぁ、私に構ってよー。」

「わかったから、後で話聞くから、今は駄目。」

「嫌だ、だって彩菜また片付けに戻るんだろ?私は今話したいの!」

どこの我儘な子供だと思いつつも、こうガッチリと腰に腕を回されていては、身動きが取れない。そこでふと、名前を出していない男の顔を思い浮かべた。

「リヴァイは?まだ仕事してるの?」

「リヴァイ?彼ならとっくに潰れてそこで寝てるよ。」

「はい?」


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