暗殺者と怪物

□サプライズはあらかじめ計画をしておく必要がある
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「彩菜、椚ヶ丘高等学校から文化祭のステージに出演要請があったんだが、出るか?」

「へ?椚ヶ丘から?」

目の瞬きを大きく繰り返しながら、渡された書類に目を通す。

この書面は生徒会長である浅野学秀が制作したと気付いたいなや、頬を緩めた。彼もあの三年E組に影響を受けた一人だからだろう。

出演予定は午前・午後の各三十分。もし出演が可能であれば、細かい時間の調節は可能らしい。

それなら、彼氏である赤羽業とタイミングが合えば一緒に回れるかもしれないと邪な考えも浮かぶ。

「普通じゃ、文化祭の出演は出身校じゃない限りキリが無いから断るんだが。一応彩菜にも関わりはあるだろ?この日程なら少し余裕があるし、どうする?」

「うん。出る。久し振りに寄りたい場所もあるし、行こうかな。」

「了解。じゃあそう返事しとく。」

「ありがとう。」

マネージャーである彼に書面を返し、勝手に上がってしまう口角を隠すために、ソファーへ口を寄せた。

当日急に突撃をして驚かしてやろうと、なんの脈絡もなくカルマへ、『楽しみだね!』と、連絡アプリでメッセージを送信しておく。

後々意味がわからず、返信をしてくるだろうが、詳細について語るつもりは無い。





「♪♪ーーー♪ーーー♪♪♪」

「ご機嫌だな。」

「そうかな?」

「時間的に余裕があるからって、仕事は忘れるなよ。」

「はーい。」

それはなにがあっても忘れるわけないじゃないか、と思いつつも、現在椚ヶ丘高等学高校へ車で移動中である。

機材はすでに搬入済みであるため、あとは歌う本人が入ればいいらしい。

「とりあえず着いたら学校のお偉いさんに挨拶、その後は諸々チェックしてすぐ本番な。」

「なんでお偉いさん?」

「お前のファンなんだと。」

「ありがたいね。」

お偉いさんといえば、椚ヶ丘中学校元理事長浅野學峯の顔が思い浮かぶ。今は昔のように塾を開き、今でもやり手であることは変わりないようだ。

校内に車を付けると、彩菜は着ていた白いパーカーのフードを深くかぶり、顔を隠す。歌手の【彩桜】は、顔出しをしない事がモットーなのだ。


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