灰色の祓魔師

□知らない人と話すのはやめておきましょう
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「遅ぇ⋯。」

神田は一人、喫茶店で注文したお茶を飲みながら、彩菜とラビの二人を待っていた。なにやら面倒事に巻き込まれ、合流する時間が多少遅れると連絡はあったのだが、それにしても待たされている事に違いない。

彩菜が約束を破るという事は滅多に無い。むしろここまで遅いと逆に、対処がしきれない、予想外のアクシデントがあったのではないかと勘ぐってしまう。

それでも、千年伯爵との戦争が終結した今、とても平和になったとは言い難いものの、世界はようやく落ち着きを取り戻し始めている。

今はまだAKUMAの残党処理や戦後処理など、やらなくてはいけない事がたくさんある。しかし、ものの近い内にきっと黒の教団は解体されるだろう。

ーーーもういっそのこと待たずに、単独でコムイに指定された任務地へ出発しておかしまうかと思ったその時。隣に一人の見知らぬ男性が座る。

黒い髪を無造作に跳ねさせ、この国では確実に見かけることがありえないに等しい着流しを纏い。その腰には一本の日本刀があった。

腰の刀は鞘ごと抜かれ側に立てかけ、注文し、運ばれた茶を啜る。

「お前⋯、随分若いな。幾つだよ。」

急に声を掛けられ、まさか自分に話していたと思っていなかった神田は、頭を叩かれ眉間に皺を寄せる。初対面の人間に、いきなり頭を叩かれるような事はしていない。

「そのなんとも言えねぇ派手な服。着てて恥ずかしくねぇの?それに刀、この辺じゃ、銃刀法違反になるんじゃね?そもそも、腕に自信はあんのかよ。」

「テメェ⋯なに、言ってんだ。」

急に自分に話しかけて来た男。彼はニコニコと読めない笑みを浮かべ、答えを促す。対して神田は舌打ちをするだけで口を開かない。

「随分無愛想じゃねぇか。そんなんだから、いつまでも馬鹿呼ばわりされるんだろ。少しは愛想よくした方がいいんじゃね?世渡り上手な方が得だぞ。」

「⋯⋯⋯。」

余計なお世話だ、と、眉間の皺が濃くなり、目付きが余計悪くなる。元々の極悪人面が悪化した。

「はっ、すんげぇ顔。んな悪人面じゃ、彼女に捨てられるぞ。むしろ振られてしまえ。今すぐに。」

「おいお前、ふざけんな。」

「ふざけてません。本気です。いたって。」

手に持ったままだったカップを一旦テーブルの上に置き。神田が注文していたであろう菓子を、少しの悪びれもなくぺろりと食べる。

「勝手に食うな。」

「ひふみひひふへへ!」

「なんつってんのかわかんねぇよ。口の中全部飲み込んでからにしろ、汚ねぇ。」

「別に、待ち人が来れば、また新しく注文するんだろ?ケチくせぇなぁ、おい。」

「⋯俺がいつ、誰を待ってるって。」

「知らん。こっちはただお前と話してみたかっただけだし。」


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