灰色の祓魔師
□将来の夢は、お花屋さんになる事です
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彩菜の場合、声帯に言霊使いとしてのイノセンスが宿っている。そのため、もしもイノセンスが使えなくなってしまえば、最悪声が出なくなると言われた。
だが、いいと思っている。
こちら側が戦争に勝つために犠牲にしてきたモノは、声よりも重く、大切な事モノだからだ。
「お姉ちゃん、病院あそこだよ?」
「本当だ⋯。」
病院の印に、ほっと安堵する。どうやら電話もあの中にあるようだ。
「ここまでありがとう。」
「どういたしまして!お姉ちゃんの怪我、大事にしてね!」
走りながら手を振る器用な少女に片手を上げて返事をし。病院の中に入り、まず受付を済ませてから電話を探す。
そして見つけた公衆電話をゴーレムに繋ぎ、コムイへの取次ぎを頼んだ。
「彩菜ちゃん、三日ぶりだね!ロシアはどうだい?荷物の中にたくさんカイロと防寒グッズ入れといたんだけど。」
正直寒さは特になにも感じない。イギリスのホームもそれなりに、というよりもかなり寒く耐性というものができてしまったのだろう。
だがそれに関しての言葉にツッコミを入れずに、まずは先に報告すべき事を伝えるべく、ゆっくりと口を開いた。
「とりあえず報告があった場所のAKUMAは全部殲滅したよ⋯?でも、街中でも遭遇したから、もう少しこの周辺一帯、様子を見た方がいいかも。」
「彩菜ちゃん相変わらず仕事が早いね!」
「早く殲滅していくに、越したことはないからね⋯。あと、太腿を少し切っちゃったから。今病院にいる。」
電話の向こうからリーバー含む科学班の悲鳴が聞こえるたような気がしたが、空耳だろうと思うことにする。
「怪我って?」
「大丈夫、たいしたことないし、少し浅くて広い傷口だから縫うだろうけど、任務に支障はないから。」
「ーーーあまり無理は、しないで。」
相変わらずの心配性に、もはや彩菜は苦笑いをするしかなく。もうこの話題を終わらせる方法は強制終了しかない。
「私の報告はこれで終わり。他に追加はない?」
「追加はないけど、彩菜ちゃん、これから治療どれぐらいで終わるかな?」
「少しだけ混んでるから、一時間以上かかると思うけど⋯。その後に人探しかな ?」
「了解!じゃあ治療が終わり次第、最寄り駅に直接向かってくれるかな?」
「え?どうしてーーー。」
「誕生日プレゼントかな?彩菜ちゃんが一番喜ぶ。」
「誕生日なら、私はもう終わってるけど、」
ーーーという言葉はおそらく届いていないだろう。そのまま通話が切られた電話口からは、機械音しか聞こえない。目を瞬かせながら耳から離し、受話器を元に戻す。
自分の誕生日は一ヵ月以上前に終わっているのだが。彼は色々と勘違いしているのだろう。
「真神さん、真神彩菜さーん、治療室にお越しください。」
「はーい。」
またなにか、コムイの奇行か⋯と思いつつも、足を運ぶ自分は、お人好しだ。
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