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□あなたと共に。
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「兼続!今日こそ首を縦に振ってもらうんだから!」



やはり今日も来たか……と溜息をつく兼続。
恋仲のマナが会いに来てくれるのは嬉しいのだが……



「それだけは出来ぬ。何故解ってくれないのだ、マナ!」



このやり取りがここ数週間、毎日の様に繰り返されている。



「私は武家の娘!必ず父の様に……兼続の役に立てるわ!」



彼女は兼続の家臣・陽月家の娘である。



「私の実力が不満なの?」

「決してその様な……マナの実力は私も認めている。」



マナは並みの男よりも武芸に優れていた。



「じゃあ登用してよ!私も兼続と一緒に戦う!」

「出来ぬ。私の義に反するのだ。」



誰が好んで慕っている女を戦場に同行させたい?
死地になるやもしれぬ場所へ……



「もう待つだけは嫌なの……この乱世でも、その先にある泰平の世でも、常に貴方の傍にありたい……」

「……マナ。」



涙目のマナを兼続は抱き寄せる。



「泰平の世になってから告げようと思っていたが……私も待てそうにない。」



顔を上げたマナに兼続は優しく口付ける。



「愛している、マナ。」

「……うん、私も。」

「私も常にマナとありたい。」



再びマナを抱き寄せて、兼続は続けた。



「……嫁に来てくれ。すぐにでも。」

「……兼続。」

「夫婦になり、常に共にあろう……」









[了]
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