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□月夜。
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「今宵は月が綺麗ですな。」
「……幸村様。」
声を掛けたのが私だと分かると、ふわりと貴女は微笑んだ。
「ええ、本当に綺麗でつい外に出てきてしまいました。」
「でももう夜も更けてまいりました。自室までお送りしましょう、マナ殿。」
そう言うと振り返り、私の着物の袖を掴む。
「もう少し……もう少しだけ一緒に見ませんか?」
私が傍に居る限り危険は無いだろうと了承する。
ふいに両腕を広げ、月明かりを浴びる貴女。
「……マナ殿、天女の様です。」
「まぁ、幸村様ったら……」
淡い光に照らされ、目を閉じる貴女を見て
不意に不安感に襲われた。