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□それは暗闇に消えた
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吐く息が白くなり始めた12月初旬。

私は空中に消えていく
その白いものをボッーとみつめては
またため息をついて
空を見上げていた。

「………もう、こんな季節なんや」

今年は春と秋が
無かったように感じる。

だからか分からないけど
妙に余裕がなく忙しい1年だった。

気づいたら
もう今年も終わってしまう
そんな時期になっていた。

昔は明日死んでも後悔しないように
今を全力で生きています!などと
言っていたのに

どうだろう。

明日、もし世界が終わってしまったら
私はやり残したことが何も無いと
言いきれるのだろうか。

明日、もし急に彼女が
卒業してしまったら?

本当に…やり残したことは……

「………冷たい、わ」

鞄を持つ手にポタッと雫が落ちた。

空気に冷やされたそれは
とても冷たくて
そして、心が痛い。

あぁ、私
まだやりたかったこと…
いっぱい…

「……いっぱい、あったのに、なぁ」

私のボソッと呟いた言葉は
冷えた空気へ
真っ暗な暗闇の空へと

どこかへ
まるで私の心から消えるように
逃げてしまった……。
 

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