猫とフルーツタルト

□*木洩れ日と天使
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メリオダスがゼルドリスと喧嘩をした

喧嘩と言っても有りがちな、口喧嘩
この二人ならば痴話喧嘩…という奴だ

俺が家に帰ってきたと同時にメリオダスが家から飛び出して行ったから、最初は何事と思いつつ、家に上がったらゼルドリスが「メリオダスに…不快な思いをさせてしまった…かも知れない」と涙目だった

今までも喧嘩はあったが、メリオダスが焼きもちを妬いていたり、勘違いが生んだ喧嘩だったり…様々だったが、今回は原因が分からない

最初、ゼルドリスがメリオダスにお茶を淹れていたらしいが、メリオダスが妙にソワソワし、口を開きかけても言わなかったり…
それでゼルドリスはどうした、茶が熱いのか?それとも嫌だったか?と聞いたらしいが、違うと叫び、机を叩き付けたら、茶が倒れ、メリオダスが火傷しないように手を引いたら…と言った具合だ

それから、メリオダスに連絡を取ろうとスマホに電話したら留守電になり、着信拒否になってしまった

俺は急いで、普段着の山吹色のパーカーに着替え、ゼルドリスと共に捜し始めた

…これが、数時間前の出来事だ

メリオダス探しは困難を極めた

メリオダスの行きそうな場所は片っ端から走り回ったが、甲斐は無し

ショッピングモールにいたデリエリやメラスキュラにも聞いたが、知らないと言われてしまった

近くの公園のベンチでへばっていると、ゼルドリスから休んでる暇は無いぞ!兄者!と叱咤を受けた
…体力の限界を感じた、家にいるという手段がなかったのかと後悔した

汗を拭いながら、上を見るとイチョウが数多の舞い落ち、秋だという事を感じられる
そう思ってみていると、後ろの…神社の方に、チラリと金髪が見えた

それが見えた直後、ゼルドリスが走り出した
猛スピード、新記録ぶっちぎりだ

人違いだったらどうするんだ
…もう俺は若い奴についていけねぇ、特に体力面で…と様々な思いつつ、弟の後をついて行った

*****

案の定、弟は人違いをしてしまったようだ

金髪、翡翠色の瞳

ここまで同じだが、女子高校生だった

片目は包帯を巻いており、その上髪で隠して、赤のリボンに白いシャツに紺セーター、チェックのスカートに短い白いソックス、ローファー…
それとチャックの開いているスクールバックには、数冊のノート、教科書…紛れもないJKだ
…もう少し、歳が上だったら_大学生ならばタイプだったかも知れない

邪念を追い払うように、すみませんと謝れば、大丈夫ですよ〜とニコニコ笑顔で返された
すると、少しだけお話、聞いてくれますかと聞いてきた
これがガランと親父辺りなら一蹴していただろう、美少女なら別だ
しかしゼルドリスが隠す気もないようで、不服さが滲み出て眉に寄せた皺を深くしていた
ちょっとだけで良いです、そんな長い話じゃないですよ、…ただ誰かに聞いて欲しいだけ何です
と言い、神社の石階段に座りこみ、語りだした

「ボク、恋人がいるんですけど
 …あ、嫌味とか、そんないじゃないですよ!?まぁ、聞いて下さい

付き合う前、彼はボクだけに素っ気なくて
でもボクの友達の子には、他の子より何倍も甘くて、優しくて…ボクが恋だって自覚した時には、同時に彼はその子が好きなんだって思ってて

彼は彼女に人一倍優しくて気に掛けて、怪我をすれば自分の事を放り出して

その友達は彼が好きらしいし、彼女はボクより優しくて芯が強くて、真っ直ぐだから…彼が好きになったのも頷けるなって
その時、勝ち目なんて無いなって、ボクの事なんて眼中に無いだろうなって思い込む事で、楽になりたくて

でも、気に掛けて貰えるのが羨ましくて、頭を撫でられたりスキンシップしているのを見てると胸が辛くて、苦しくて
『なんであの子ばっかりなの』って思う自分が嫌で嫌で

嗚呼、ボクは彼女の影なんだ、居ても居なくても変わらない影なんだって悲しくなって、それで自己嫌悪して

影のままじゃ嫌だって責めて彼の好みに会わせて、友達の外見に似せるように髪を長くしたり、ヘアアイロン使ってストレートにしたり
お洒落に気を使って、片耳だけピアスを付けてみたり、馴れないヒールを履いて…

面倒臭いって思うでしょう?
でも女の子はそんな生き物なんです
好きな人を想って、好きな人に合わせて
__脳内を好きな人で埋め尽くしたいんです

勢いで告白しちゃってそしたら…ボクが好きだったって初めて知ったんです

アイツの真似はすんな、厨ニでパワフルなお前だから良いんだって

人って天使でも神様でもない限り、相手の心なんて全部分からない
多分、聞かないと分からない事だらけなんです
だから言葉を使うんだなぁって思うんです
相手の言葉を、行動を悟る事も大事かも知れません、でも相手の心を聴こうと、耳を傾けて見て下さい
ボクが言える、たったひとつの事です」
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