狩人は奇術師と共に
□狩人は奇術師と共に 第2章
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雨の中大急ぎで帰宅したヒソカが見たものは、窓ガラスが割れて踏み荒らされた部屋。
そして持ち主の温もりが失われたレインの冷たいベッドだった。
ヒソカの脳が、すぐに状況を整理する。
おそらくヒソカに襲撃を仕掛けてきた輩が、レインを攫って行ったのだろう。
普段ならばそんな連中に捕まるレインではないが、今のレインは代償によって一般人以下の身体能力だ。
やはり家を空けるべきではなかった。
何か手掛かりがないかと、部屋に残された痕跡を探る。
微かに残るオーラ、相手は念能力者だ。
テーブルの上に残された1枚のメモ用紙。
そこに書かれていた住所と、"女は預かった。上記の場所に一人で来い"の文字。
此処にレインが居る。
急がなければ、自分のせいでレインを危険な目に遭わせるなど二度とゴメンだ。
「(無事で居ておくれよ、レイン…!!)」
土砂降りの雨の中、ヒソカは指示された場所に向かい全力で走った。
近いはずの距離が、ひどく遠く感じられる。
そして近づくにつれて感じるレインのオーラ。
この感覚は。
「レイン!!」
飛び込んだ人気のない倉庫。
そこに佇んでいたのは、赤黒いモノに塗れて立っているレインの姿。
そして足元に転がる、無残な男達の死体。
どうやら無事だったらしい。
「…意外と早かったな、おかえりヒソカ。」
平然と振り返ったレインだが、その呼吸は荒い。
まだ体調が思わしくないのは明らかだ。
「ゴメンよ、レイン…そいつら、ボクを狙ってきた奴等だろう?危険な目に遭わせてしまったね、やっぱり家を空けたりしなければ良かった…♠」
「いいよ、別に…こいつら弱かったし。ヒソカの敵は、私の敵だし…ゲス野郎共だったから、殺すのに躊躇は無かったよ。ヒトを狩ったのは初めてだけど…もろ過ぎてつまらないな。」
表情のないレインが、足元の肉塊を踏み潰す。
グチャリと耳障りな音が、静かな倉庫に響いた。
「レイン…もう良いから、帰ろう♦まだ調子が悪いんだろう?そんなびしょ濡れの体じゃ、また熱が上がってしまうよ♠」
靴が肉片と血で汚れるのも気にせず、レインに近づいて抱き寄せる。
濡れている体は、だいぶ熱を持っている。
それにレインの右肩から流れる血。
急いで帰って処置しなければ。
レインの体を抱き上げ、走る。
レインの速く荒い呼吸が間近に感じられた。