狩人は奇術師と共に
□狩人は奇術師と共に 第1章
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「なかなか熱が下がらないねぇ…♠」
体温計を手に苦い顔をしたヒソカが温くなってしまった氷枕を取り換え、頭にも氷水で冷やしたタオルを当ててくれた。
世界を越えた代償は、まるで酷い風邪のようでこの1週間レインはろくに動くことも出来ずにヒソカの自宅の一室で過ごしていた。
ヒソカの住むマンションは一人暮らしには十分すぎるくらい広く、部屋数も多かったために空き部屋の一室をレインの私室として宛てがってくれた。
部屋にはベッドと机と椅子といった、最低限の家具しか置かれていないのだが、今のレインにはそれで十分だった。
此処は仮拠点の一つらしく、ヒソカは小まめに住所を変えているらしい。
何でも襲撃者対策なのだとか。
そういうわけでレインが回復すると同時に他の場所に居住を移すということになったため、必要な家具は移動後に購入すると決めた。
服は最低限、下着とインナーくらいは持って来ていたので何とかなっている。
持ってきた荷物は、ひとまず部屋の隅に纏めて積んである。
薬品の類は迂闊に触ると危険ということで、ポーチや袋に突っ込まれたまま手つかず状態だ。
「…昏睡の方が、代償としては楽な気がするな…ずっと、この状態はかなりキツい…」
ヒソカ曰く、現在レインの熱は40℃。
ついでに頭痛と吐き気と息苦しさがセットになっている。
それが1週間も続いているもので、流石のレインもだいぶまいっていた。
レインにとって風邪や体調不良は薬によって一晩あれば十分治せるものだったので、長期間に渡る不調というのは初めての経験だ。
おかげで慣れないこの状況は非常にツラいものがあった。
「出来ることなら代わってあげたいんだけど、そうもいかないからね…♠何か食べれそうかい?」
「……果物。」
「OK、今持ってくるよ♦」
ヒソカが部屋を出ていく。
正直食欲はないが、少しでも何か食べなければ体力は落ちる一方だ。
早くどうにかならないものかと思考を巡らせるが、薬を飲んだところで念の代償はどうにもならないだろう。
結局のところ、耐えるしかないという結論に達してレインは肩を落とした。