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□雨憂
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静かな部屋。

とある日の午後。

臨也は1人パソコンに向かっていると、ふと、外に目をやった。

空は曇り始め、怪しい色を見せている


「・・・雨降るかな」

そんな事より仕事だ、と再びパソコンに戻った。



「さて、こんなもんかな」

やがて仕事も終わり、時計を見ると15時を示していた。

「これからどうするかな・・・、あ」

外を見やると、雨が降っていた。

「あーあ、降っちゃった」

静かな雨音を聞きながら、呟いた。

「雨だけど・・・暇だし池袋行こ」

いつもの人間観察をするために、外へ出た。

コートを羽織り、傘を持って外へ出た。


池袋は雨だというのに、人で賑わっている。

鈍色の空の下、ひしめき合う様々な色模様の傘はまるで灰色の雨の日を彩るようだった。

俺は雨が嫌いだ。

鈍色に濁った空を見ていると、心に突っかかっているものが浮かび上がってくるような気がする。

曖昧に、不安にさせる感情。

そんな気持ちになるから、雨は嫌いだった。

まぁただ単に濡れるから、というのもあるが。

1人臨也が黒い傘をさして歩いていると、1人の男の顔が浮かんできた。

金髪のバーテン服を着た青年。

――シズちゃんに会いたい

そう思った。

理由なんてない。第一臨也は静雄を嫌っている。嫌いな相手に会いたいなんて変だ、と、己の心に問いかけた。

いや、違う。きっとこれは雨で下がった気分をシズちゃんに会うことで紛らわそう、ということだろうか。

彼といつも通り対峙して、ケンカすれば、憂鬱なんて忘れるだろうか。

それをどこか心に願って、臨也は静雄を探すことにした。


暫く歩いていると、遠くに背が高い金髪の頭が見えた。

もちろんバーテン服だ。

(みーつけた)

臨也は静雄に近寄った。

「やぁ、シーズーちゃんっ」

「あぁ?」

静雄は振り返った。そして、青筋を浮かべ叫んだ。

「手前!何しに来た!」

「えー?シズちゃんに会いに?」

「気色悪ぃ事言ってんじゃねぇよ」

「ははっ、嘘だよ、嘘!なわけないじゃーん」

「手前・・・殺すぞ」

「シズちゃんに殺されるのはやだなぁ」

「うるせぇ!」

と、静雄が叫び、標識を手に取った。

それを眺め臨也は、「そうこなくっちゃ」とナイフを取り出した。

「おらぁぁぁぁぁぁ!!」

静雄は標識を振り上げ、臨也はそれを難なく躱す。

静かな雨音の中、雨色の街で2人の声が響く。

それは気だるい雨の憂鬱さえ振り払うほど、熱く、鮮やかに、いつまでもいつまでも、そこに燻っていた。


――雨は嫌いだ。

だけど、君と過ごす雨の日なら、いいかもしれない。
 

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