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□孫堅r
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孫堅視点

彼女の瞳が曇った。
彼女のことだ。

「俺の愛が、信用ならないか?」

「い、いいえ…。」

相変わらず、分かりやすい。
そこも愛らしいところではあるが。

無論、彼女の瞳の力は絶大だ。
情報は何よりも勝る。
この混沌とした世界では、その価値は何倍にもなる。

だが、彼女はその力を使いたがらない。
それならそれで構わない。
最悪の事態は他の勢力に盗られることであり、手元にいるだけで十分なのだ。

ここは、彼女が自由に生きられる場所だ。
唯一の、場所だ。
他になんて行かせない。




俺なしでは生きられないように、心も身体も調教する。





「悪い子だ。
 俺の愛を疑うとはな。」

寝台に彼女を転がせば、彼女は表情と身体を強張らせた。
逃げる前に馬乗りになり、両手の指を絡めて固定する。

「確かに、その瞳の力があったからこそ、こうして俺とお前は巡り合った。」

ひとみは傷ついた表情をする。
それを見て、俺はゾワリと腹に熱が集中した。
どうにも、彼女のせいで苛めることが好きになってしまったのかもしれない。

「だが、今俺が組み敷いている理由に、瞳の能力は全く関係ない。」

彼女の瞳には淡い期待と、すがるような愛への渇望。



逃げたいのに縋りたい。
そんな彼女の矛盾した目がたまらない。


「例え、お前の瞳が抉り取られてしまったとしても、俺は骨の髄まで愛する。
 それほどまで、愛おしいのだ。」

ドロドロな俺の愛に、ひとみは震えあがったが、俺には分かる。
そんな重い愛であっても、渇望しているのだろう?
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