SHADOW (短編集)

□†ケイ君のささやかな一日†
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ケイ
だってさ、僕のまわりの人って、現実的な人居ないんだもん

稀流斗
気持ちは分かるけど、ケイも手伝えよ。

ケイ
やだよ(困)
ハンコ押しなんてもう飽きる程押したし、それに先輩だよ先輩。

稀流斗
俺の場合、同じ年齢だから先輩でもねーし、立場的に一年に居るだけだからな。

ケイ
まぁそうだけどさ。
ちょっとは気を使ってよ。僕だってずっと暇な訳じゃないんだからさー。

稀流斗
どうでもいいけど、この書類全部押し終わったら帰っていいんだよな?

ケイ
うん。でもさ、稀流斗も結構悪い子だよねー。苦手な美術をサボる口実に手伝いの話しに乗るなんてさ。

稀流斗
苦手なものは苦手なんだよ。
お前だって、苦手なもんあるだろ?

ケイ
あるっちゃぁ…あるけどさぁ…。

稀流斗
あぁー…、なんかハンコばっかし見てたらゲシュタルト崩壊しそうだ…

ケイ
ゲシュタルト崩壊って、結構学生とかよく使うよね。場所にもよるけど。

稀流斗
あー。絆奈がネットの『ニィちゃん』でそうゆうの上がってたって言ってた気がする。

ケイ
僕も学校の書類見ただけでゲボ吐きそうだよ。

稀流斗
よそで吐けよ。

(書類にハンコを全て押し終わり、立ち上がる)

稀流斗
終わったー。
(立ち上がり伸びをする)

ケイ
お疲れ。書類は僕が持って行くから、教室に戻ってもいいよ。

稀流斗
おう。じゃあな。

ケイ
(手を振り、バタンとドアが閉まる)

はぁ〜。今日は特に何も起こらなきゃいいけれど。

(書類の束を両手で抱え、職員室へ渡しに向かう)








ケイ
失礼します。(出て、ふと窓から外を見上げると、木の方に一羽の真っ白い鳩が止まる)

お。珍しいなぁ。
白い鳩だ。


…そういえば、白い鳩に関する童話みたいなのがあったっけ…。


(ぼんやり見ていると、鳩が飛び去って行ってしまった)



ケイ
あー。行っちゃった。
(廊下階段を下り、図書館で新しい情報がないかチェックしに向かう)


ケイ
あれ? 凛ちゃん。


………(人が少ない図書館の本棚で、本を一冊手に抱えている凛に会う)

ケイ
どうしたの? 休み時間に本を借りに来た?


(頷き)
ケイ先輩の方は?

ケイ
僕は何か新しい情報でもないかチェックしに来たとこかな。

これでも只の生徒会長じゃないし。


(二人が話している中、凛が別の本棚の方を見て、一人の女子が白く分厚い本を手に取り、友達の居る所へ向かっていった)


ぁ…、あの本…

ケイ
ん? もしかして借りたかったの?


……ちょっとだけ。
表紙が真っ白で、タイトル部分にカギカッコだけ表記されてあったからどんな内容か気になって…

ケイ
へぇー。僕も興味あるな。
今度返されてたら借りてみたら?

(こくんと頷き別れ、ある程度週刊雑誌や新聞を読み、図書館を後にした)




ケイ
さてと。特になにもなかったなぁ〜。

(廊下を歩くケイの後ろで、先程の白い本を借りた女子と友達が喋りながら歩いていた)




「あれ?」

窓枠に一羽の白い鳩が止まっているのに気づき、立ち止まる。

藍色の髪にセミロングの子。

「…この鳩、何でこんなとこにいるんだろう?」

少し近寄ってみるが、逃げようとしない。



「わぁ。白鳩だ」


隣でダークブラウンのショートカットをした友達が、一冊の本を抱えたまま近寄って来て立ち止まる。


「この鳩、足怪我してるね?」

「え?」


足の方を見ると、確かに右足の方が赤くなっており、左足に重心をおいてる。

「あ。だからここに居て、私が近づいても逃げなかったんだ」

「そうゆう事みたい。そうだ、保健室に行って、手当てしてもらわない? このまま放置してたら、ずっと飛ばないと思うしさ」


確かに。

何らかの拍子で足に怪我を負い飛べなくなってるとしたら、ずっとここに居るかもしれないし、何よりも飛べなくなるなんて可哀想。



「そうだね。まだお昼時間あるし、行こっか」



そう言って、そっと白い鳩を両手で落ちないように触れる。

意外に抵抗などは一切せず、大人しくそのまま抱いて保健室まで向かって行った。
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