スパイに恋愛はご法度!

□城
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?「そなたがヒサコか。ランスロットから話しは聞いておる」

『はい。お目にかかれて光栄です……カール国王様』

ここ、フェードラッヘにきてちょうど半月。
ようやく城へ入ることが出来た。
そして、今はカール国王と謁見中である。

カール「それで、その……記憶がないんじゃってな」

『……はい』

カール「いろいろ大変じゃとは思うが、この国を故郷のように思って、気楽に暮らしていくが良い」

『ありがとうございます』

カール「ふむ。そうじゃ。せっかくなら少し城の中を見てはいかぬか?ランスロット、案内してやれ」

ランスロット「御意。ではヒサコ、行こうか」

『はい』

私たちは王に一礼してから玉座の間をでた。



それからランスロットと一緒に城の中を見てまわった。
次に1人で来ても迷わないように、道を頭に叩き込みながら――



フェードラッヘ郊外、練兵場。

ランスロット「さて、俺はそろそろ他の皆と合流しなきゃいけないんだが、ヒサコはどうする?家に帰るか?」

『いえ、ここで見学してます』

ランスロット「そうか。特に危険はないとは思うが、なるべく離れたところにいてくれ」

そう言うとランスロットは行ってしまった。

――そういえば彼、双剣だっけ。
双剣の使い手はなかなかいない。
私は少し胸を躍らせながら彼を目で追いかけた。

やがて準備が整ったようで、ランスロットは剣を振るい始める。
初めは軽く、だんだん速度を増し、やがて――

ランスロット「白竜騎士団の誇りにかけて……ヴァイス・フリューゲル!」

ヒュン――

辺りに冷気が漂った。

兵士1「さすがランスロットさんだ!」

兵士2「よし、俺達もやるぞー!」

その場にいた兵士達が口々にランスロットを褒め称え、自らの士気もあげる。

そんな中、私は動けずにいた。

普段のあの部屋からは想像もできない繊細かつ力強い太刀筋、軽やかな身のこなし、そして真剣な彼の表情――

すべてが美しいと思った。
今まで見た何よりも、誰よりも――

ふいに胸に違和感を感じ、そっと手で押さえる。

――なに、これ……

まるで胸が締め付けられているかような痛み。
そして、ドクドクと早く波をうつ心臓……

?「よっ、ヒサコ!」

『えっ!?…あ、ヴェインさん!?』

急に聞こえた横から声に驚く。
うそ、私が人の気配に気がつかないなんて……

ヴェイン「どうだ?やっぱりランちゃんはかっこいいだろー?」

『……はい』

うなづいた私に「だろだろー!なんたってランちゃんは……」と話し出した彼に構っている余裕はなかった。
今まで感じたことのない胸の痛み。
これはいったい――
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