私立九瓏ノ主学園 アルスマグナ

□僕を止めて
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コンビニに行って初めて知ったのだが、アキラ先輩は往復の切符を買うお金しか持っていないらしい。

仕方ないので、僕のお金で自分の分のおにぎりと、アキラ先輩の分のうどんを買う。

店員さんにうどんを温めてもらって、外で待つアキラ先輩に渡した。

「さんきゅ」

「いいですよ!今日は僕の奢りです」

「この前お前にジュース一本奢ったから、そのお返しな」

あえていつものように振る舞えば、いつもの笑顔が返ってきた。

そういえば、雨が止んでいる。

雲の合間から青空が覗いている。

それに比例して、僕の心も幾分か晴れやかになった。

「うどんうめぇ〜」

「僕にも一口!」

「嫌だね」

「えーなんで?!」

「やっぱりさ、頂いたものは感謝の意を込めて全部頂かないと」

良かった、いつものアキラ先輩だ。

いつもの笑顔がアキラ先輩に戻った。

それだけが本当に嬉しくて、手に持っていたおにぎりを勢いよく頬張った。







クロノス寮に戻る頃には、もうとっくに日が暮れていた。

門限をとうに超えていると、寮母さんに2人仲良く叱られる。

罰として1週間外出禁止の規制がかけられてしまった。

まぁ今週は特に出かける予定もなかったから、僕は別にどうってことないんだけど。

アキラ先輩は少し悔しそうにしていたかな。

部屋まで戻る途中、アキラ先輩とこんなことを話した。

「パク、ありがとな」

「へ?何がですか?」

「……僕のこと、止めてくれて」

「…僕?なんからしくない言い方しますね!」

「……だよな」

アキラ先輩が苦笑いした。

その表情はどこか切なくて、何故か胸の奥がキュッと締まる感覚がする。

「じゃあまた明日、学校でな」

「あ、はい!明日起こしに行きますね!」

「頼むわ〜」

2人で手を振り、笑顔で別れる。

アキラ先輩を起こしに行かなきゃいけないから、今日は早く寝よう。

明日の朝を楽しみにしながら、今日を終えた。
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