私立九瓏ノ主学園 アルスマグナ

□悪くして
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部活が終わり、メンバーが帰り支度を進めるのを見つめる。

泉には残れと言ってあるため、帰ることはないはずだ。

「じゃあ先生、さよなら〜」

「さようなら!」

「さよならー!」

他の3人が口を揃えて別れの言葉を告げたあと、アキラが「泉もじゃあな」と小声で泉に言った。

「では」

と素っ気なく返す泉だが、信頼している輝だからこそというのはよく知っている。

「……さて、泉」

みんなが出ていったところで、泉に声をかける。

「……はい」

泉が片付けをしながら答えた。

「片付け終わったら職員玄関で待っててもらえる?」

「わかりました」

真面目なこいつのことだから、きっと逃げ出すなんてことはないとわかっていた。

泉の片付けが済むまで待ち、済んだところで一緒に部室を出た。

「じゃあまたあとでな。少し待ってて」

「はい」




・・・





冷たい風が吹き抜ける職員玄関。

風で葉が舞う中、マフラーを首に巻いた泉が手袋をはめた手をさすりながら玄関口に立っていた。

それを見て急いで靴を履く。

「泉、お待たせ」

「人を待たせておいて遅いですよ」

「ごめんごめん」

車はすぐそこだから、と言うと、泉はため息をつきながら俺についてきた。





車に乗り込み、泉が後部座席に乗ったのを確認してからエンジンをかける。

冷気で冷やされた座席はひんやりとしていて、布越しでも容易に伝わってくる。

ミラーで泉を見てみると、ボーッと窓の外を眺めていた。

考え事でもあるのだろうか。

まぁそんなにすることもないもんな。

……にしても、勢いで泊まれと言ってしまったが、果たして泉は本当に良いのだろうか。

もうすぐ家に着いてしまう頃に不安になってもしょうがないのだが。

もともとは「悪さをしないように見ている」という理由で泊まれと言ったのだ。

抑えろよ、俺。

そう、自分に言い聞かせていた。





家に着くと、泉と俺は後部座席から降りた。

「先生の家、初めて来ました」

「あんまり人は呼ばないからね」

「そうなんですか」

簡易的な門をくぐると、泉は興味深そうに庭を見ていた。

「そんなに気になる?」

「いや、しっかりとお庭の手入れをされているのですね」

「まぁね」

なんだそんなことか。

庭を舐め回すように見ている泉に、家の中へ入るように促した。
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