私立九瓏ノ主学園 アルスマグナ
□僕の想いは
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僕が少し落ち着いたところで、奏先輩が口を開いた。
「パク、最近悩み事でもあるんですか?」
奏先輩が僕の顔を見ている気がする。
ドキドキして、奏先輩の方を向けないでいた。
「……なんでそう思うんですか」
思ったより小さな声で返す。
「最近パクの笑顔をあまり見かけなくなった気がするからです。それに、さっきだって泣いてたじゃないですか」
そんなに僕のことを見ていてくれたのかな。
自意識過剰な僕の思考は、自分の都合のいいように解釈されてしまう。
「……1人で悩んでたってしょうがないんですよ。俺でよければいつでも相談に乗りますし」
「本当……ですか……?」
驚いた僕に、奏先輩がそっと微笑んで頷いた。
「じゃあ、部活が終わったら……奏先輩の部屋にお邪魔していいですか……?」
「はい。待ってますね。……あ、練習再開しますよ。振り付けがわからなくなったら俺に聞きに来てくださいね」
「……はい!」
『待ってますね』とか『俺に聞きに来てくださいね』とか。
そんな言葉にさえ僕の心は反応してしまう。
ドリンクを一口飲み、みんなの元へ向かった。
振り付けの確認が終わり、各自個人練習に入った。
自分の持ち場に着くと、奏先輩の方からやってきてくれた。
「パク、振り付け分かりましたか?」
そっと首を横に振ると、奏先輩はどこがわからなかったのか聞いてきた。
分からない部分を教えると、奏先輩は優しく丁寧に教えてくれた。
やっぱり奏先輩は素敵な人だ。
そう思える瞬間だった。
部活動が終わった。
先生は資料の制作が残っているらしく、足早に職員室へ戻った。
僕たち生徒は昇降口まで行き、タツキ先輩が迎えの車に乗ったところを見送った。
残った3人で寮までの道を歩く。
「……パク、大丈夫か?」
アキラ先輩が僕の顔を覗き込んできた。
「何がですか?」
「いや、さっきの部活の時さ。お前だいぶボーッとしてただろ?なんかあったのか?体調が悪そうってわけでもないし……」
アキラ先輩にも見抜かれていた。
「……別に……なんでもないです」
「本当か〜?」
アキラ先輩に茶化される。
なんだか全てを見透かされそうで、何も発することができなかった。
そんな僕に、アキラ先輩は
「困ったことがあったら、俺でも泉でもタツキでも先生でも……誰でも構わないから相談するんだぞ?」
と言いながら、僕の頭にポンと手を置いた。