私立九瓏ノ主学園 アルスマグナ

□貴方のネックレス
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「……アキラ、ちょっと待て」

「なんだよ〜また注意?」

貴方に校門で話しかける理由といえば、校則違反の注意のほかに見当たらない。

「それ以外に何の用があるっていうんですか」

「たまにはさ〜サラッと『おはよう』とか言ってくれたっていいじゃない?」

俺は臆病だから、貴方がいつも言うような「おはよう」なんて言えない。

「……で?今日はどこが違反なの?」

「これです」

ワイシャツの襟で上手く隠していたようだが、残念ながら見えている。

彼の首元にかかったチェーンを親指と人差し指で軽く掴む。

それだけで胸の鼓動が早くなる自分に、最近はもう呆れてしまっている。

「あぁ〜…ネックレスってダメ?ピアスOKなのに?ダメ?」

くりっとした目で俺を見つめる。

「ダメです。首元がだらしない。動いていて邪魔でしょう?」

「べっつに〜?」

そう言ってわざとらしくネックレスを外に出し、ジャラジャラと音を立てながら俺の目の前でチラつかせた。

細いチェーンにリングの飾りが通してあるデザインだ。

「意地になってないで、ちゃんと規則は守ってください」

「はいはい、わかりましたよ〜」

彼はネックレスをシャツの中にしまい、鞄を持ち直した。

「じゃあな泉、教室でな」

相変わらずのキラキラとした笑顔で手を振るアキラが昇降口に入ったのを見届けた後で、「また後で」と小さく呟く。

こんな女々しいことを、もう半年も続けていた。



・・・



昼休み。

1ヶ月ほど前までは、アキラが「一緒に食べよう」と誘ってくれていた。

だが、ここ最近は声をかけられなくなってしまった。

何故だろう。

いや、別に1人で食べることになんの抵抗もないのだけれど。

「そーうせーんぱい!!」

突如、教室中に響く声で俺の名が叫ばれた。

顔を上げれば、満面の笑みの黒髪と、ピンクのうさぎのぬいぐるみと、それに負けないくらいに顔を真っ赤にした金髪が俺の方を向いていた。
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