私立九瓏ノ主学園 アルスマグナ

□僕を止めて
1ページ/7ページ






梅雨。

確か、今朝の天気予報でこの雨は一日中降り続くと聞いた。

最近はそんな日が何日も続いている気がする。

シトシトと降り注ぐ雫は、強くもなく、弱くもない。

地面を潤すように長い時間降り続く。

そんな中僕は、傘を差して駅まで歩いていた。

今日は休日。

部活の練習もなく、久々に時間ができたので、外へ出ることにした。

アキラ先輩とデートへ行こうと思ったのだが、あいにく先約があるらしく。

折角の休みなのにな、なんて思ったが、愛しい人を束縛してしまうのは好きじゃない。

アキラ先輩に嫌われてはひとたまりもないし。

そんなことを考えていると、目的の駅へと到着した。

運賃表を見て、気まぐれに行きたいところを決める。

その分の切符を買い、改札を通った。

リフレッシュをしに、今日は少し遠くの知らない街へ行こう。

お金を少しだけ多く持ち、当てのない旅へ出た。




・・・




街の名前も読めないような、見知らぬところ。

一応都内にあるものの、いつも見ている景色とは打って変わってなかなかの田舎。

雨は残念ながら止んでいないが、それがまた良い雰囲気を醸し出しているような気もした。

傘を差しながらのんびり歩く。

あとで迷わないように、軽く周りの景色を覚えながら。

今頃アキラ先輩は何してるかなぁ。

先約ってなんだろう?

あとで嫌がられない程度に聞いてみようかな。

あー、アキラ先輩に会いたいなぁ。

次々と浮かぶ自分の心の声を一つ一つ確かめるように歩を進める。

気づけば、あっという間に午後3時になっていた。

偶然にも、降りた駅からはそこまで遠くないところにいるようだ。

相変わらず止まない雨に少しうんざりしながらも、寮から持ってきた傘を差しながら駅まで歩いた。

行きの出発駅と比べると、だいぶこじんまりした駅だ。

無人駅らしく、人気が全くない。

時刻表を見てみると、電車が来るのは10分後だと書いてある。

時間が余ってしまったので、何気なくホームに出てみる。

雨の匂いが優しく出迎えてくれた。

周りを見渡しても、さっき歩いた田舎が広がって……

……ん?

誰かいる。

明るめのジーンズに、黒のパーカーを着てフードを被っている。

フードのせいで顔が見えないが、わずかに垣間見えた頬には絆創膏。

こちらから見えているのは左頬……。

左頬に絆創膏……?

僕の頭の中で、その人物はほぼ断定されていた。

きっと、僕が今会いたがっている人だ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ