私立九瓏ノ主学園 アルスマグナ

□僕の想いは
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「だから違うだろ?そこはさっき言ったように……」

「すみません……」

また先生に怒られる。

今日で何度目だろうか。

既に僕の頭の中では先生の説教が右から左へと流れるようになってしまっている。

ダメだ……しっかり受け入れないと。

そう思えば思うほどに頭はボーッとしてしまった。

視界の端に映っているのは奏先輩だ。

振り付けをしっかり覚え、先生のアドバイスを取り入れながら華麗に踊っていた。

指先まで意識された踊りに目を奪われる。

「パク!!聞いてるのか!!」

ボーッとしている僕に怒った先生の怒声が、部室中に響き渡った。

他のメンバーの視線が僕に刺さる。

「すみ……ません……」

「はぁ……」

先生の大きなため息が聞こえる。

タツキ先輩が心配そうにこちらを見ているのが見えた。

「一回休憩だ。終わったらもう一度振りの確認をして個人練習を再開するからな」

先生はそう言うと、タバコを持って部室を出て行った。

きっと化学準備室で吸うのだろう。

僕は自分の荷物を置いたところへ向かい、ドリンクを手に取った。

最近調子が悪い。

何もかも上手くいかなくて、それをわかってくれる人がいない。

体から力が抜けて、床に座り込んでしまう。

「……」

自然と溢れ出てくる涙をこらえることができず、持っていたタオルで目を抑える。

泣いているところなんか誰にも見られたくなくて、ずっと伏せていた。

少し経って、肩に誰かの手が置かれる。

そっと顔を上げてみると、僕の肩には手袋のはめられた手が乗っていた。

「パク、泣いてるんですか?」

奏先輩だった。

思わず心臓が飛び跳ねる。

嬉しさと恥ずかしさで涙がさらにこみ上げてきた。

そんな僕を見た奏先輩は、僕の頭を撫でてくれた。

「奏……せんぱっ……」

自分が思っているより泣いていたようで、上手く言葉が出てこない。

「なんですか?しっかり通じるように話してくれませんか」

そんな言葉とは裏腹に、背中をトントンと優しく叩いてくれる。


なんてずるい人なんだろう。


なんて素敵な人なんだろう。
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