美しい残酷さ

□acht
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『いや……なんか聞いたことあるなと思って、さっき思い出したんです』


「え?」


『その人肉を食べてたっていう一族、確かアレクサンダー・ビーンっていう人じゃなかったかと……』


「ええ!?知ってるの!!?」



ほら、やっぱりこうなる。


リヴァイにも睨まれた。本当にごめんなさい。



「聞かせてよ!!知ってるんでしょう!?」


『……少しだけですよ。いつもみたいに夜明けまではしませんから』



困った人だ。ヤッホーイと喜ぶものだから溜め息をつく。



『アレクサンダー・ビーンがそのカニバリズムをする一族の長で、一人の名前ですね。旅人を襲っては金品を強奪していたらしいです。でもそのお金では足りずに人肉を食べていたらしいですよ』


「ソニーは?」


『アレクサンダーの愛称がソニーらしいです』


「何でバレなかったんだろう?」


『見た人は全員狩られたからかと』


「何で強奪だけで足りなかったの?」


『……多分人数的に足りなかったんだと思います』


「人数?」


『一族と言いましたでしょう、自分で』


「ああ、そっか。4人家族とかだったら足りないか。ん?でもそれじゃああまり殺さなくてもいいはずだよね?噂になるくらい殺してたわけだから……」


『ビーン族は40数人の一族だって言われてます』


「40人以上も!?」



ハンジさんはそこまで話すとブツブツ独り言を言い始めた。そんな大人数何処から盗んできたのかとか、何人殺したのかとか……これは逃がしてくれそうにない。



『あまり働くのは好きじゃなかったみたいです、そのビーンという人は。家を飛び出して途中に女性と意気投合して生涯の伴侶として迎え入れて、浜辺の深〜い洞窟に住んだそうです』


「何でそんなところに?」


『あまり人の寄り付かないところだったからかと』


「何で!?浜辺ってあれでしょ?海っていうところの近くでしょ!?」



そっか、この世界の人は海は書物でしか知らないんだ。
アルミンの記憶を見たときの書物を思い出す。ハンジさんも見たことあったんだ……



『多分当たり前にあったんでしょうね、海というものが』


「そっか……それで?最初の頃はふたりだったんでしょう?何で強奪じゃあ足りなかったのかな?そこの近くを通る人はいたから強奪できたんでしょう?」


『ビーンは現金以外は取らなかったそうです。宝石とかだとそれを売らなくてはならなかったので足か付くと思ったみたいで』


「結構賢いんだね……それで?」


『お金が足りなくてどうしようとなったときにビーンが思いついたのが人を食べるということらしいです』


「どうやって食べたんだろう?」


『……紅茶飲んでるんですからやめませんか?』



そこはさすがに納得したのかそれ以上は聞かなかった。



「それから子供が増えて40人以上もの大家族になったんだ……最後はどうなったの?」


『一回だけ狩りが失敗してそれがきっかけで捕まり、全員処刑されました』


「どれぐらいの期間そんな生活をしていたの?」


『20年以上だって聞きましたけど……』


「ん?それだとおかしくない?人間が妊娠して産むまで10ヶ月でしょう?それからすぐに妊娠したりは難しいだろうし……」


『えっと……』



ハンジさんの言葉に何と言えばいいのか悩んだ。
説明しづらいことだし、この言葉がこの世界にあるのかもわからない。いや、無いと信じたい。


ハンジさんは目をキラキラさせるものだから余計に困る。


言うしかないか……



『近親…相…かん……』


「きんしんそうかん?」


『………』



誰か助けて!!!



『……血の繋がってるもの同士で子供を作ることです』


「父親と娘ってこと?」


『はい、そういう感じです……』



ダメだ、少し気持ち悪くなってきた。



「何でそんな大人数になったんだろう?食いぶちが減っちゃうのにね」


『人数が多ければ狩りがうまくいきますでしょう?』



「おお!私達と一緒だね!!」



もうこれ以上はダメだ。私が気持ち悪さで倒れる。
そうなったとき、急にリヴァイが立ち上がり私の腕を引いて立たせた。



「ちょっと〜魅也取らないでよ〜」


「黙れ、さっさと寝ろ」



すぐさま部屋から連れ出される。


本当に助かった。ありがとうとお礼をいうとチラリとこちらを見ただけだった。





その頃……



「ねえエルヴィン」


「何だ?」


「何で魅也はあんなこと知っていたんだと思う?海に関する文献は殆どないからこの話も殆ど知られてないはずなんだけど……ましてやあまり人が知りたくないようなことだしね」


「……さあな」



ふたりの話は私に届くことはなかった。








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