美しい残酷さ

□sieben
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『ミカサ、大丈夫?』


「軽いから大丈夫。姉さんは心配しないでいい」



未だ意識のないエレンをウォール・ローゼまで運んでいた。主にミカサがおんぶしてそれを私達が先導していく感じ。


本当に生きてくれてたんだ。そう喜んでいた気持ちは、突然何処かへすっ飛ばされた。



ウォール・ローゼに入った直後の事である。



「止まれえ!!!!!」


「「『!!?』」」



突然の大声と共に囲まれた。


素早くミカサからエレンを渡してもらい、ミカサは戦闘体勢に入る。


水門近くの一番丈夫な場所だ。間違えて榴弾を打ち込んでも破壊はされないところ。


左右後ろは壁だ。目の前には訓練兵。
状況が飲み込めない。でも良くないことはわかる。



「そこを動くな!!その少年は重大な反逆罪を犯した重罪人だ!!」



大声で叫ぶ男、彼は確か駐屯兵団の隊長、キッツ・ヴェールマン。ハンネスさんと同じ役職だ。


急いで状況を整理しようとしているアルミンだったが、動揺している彼に判断させるのは危険だ。


私から言葉を発して時間稼ぎすることに決めた。



『彼が何かしたというの!?キッツ・ヴェールマン!』


「気安く呼ぶでない!!貴様は何者だ!!」



この人私のこと知らないんだ。


せっかく寄付やらなんやらしてあげたのに……意味なかったのか。



『彼は何も悪いことをしていないはずだ!!』


「黙れ!!」



聞く耳を持ってくれないキッツ。もう呼び捨てにしてやる。



ミカサがブレードを抜いて構えたまま数分経つ。私の言葉が終わってから誰も何も言わない。
エレンに問うつもりなんだ。何を言ったって最後は殺すくせに……



「殺してやる」


『……え?』



なんていうタイミングでなんていうことをいうんだエレン。


エレンは目を覚ましてキョロキョロと見渡す。状況が理解できないようだが、今回はそんな悠長なことを言ってられない。



「エレン!!」


「!?」


「エレン!ちゃんと体は動くか?意識は正常か?知ってることを全部話すんだ!きっとわかってもらえるよ!!!」


「アルミン…!?」


『アルミン落ち着いて。冷静になりなさい』



アルミンでさえも軽いパニック状態。エレンの殺してやる宣言に周りがざわつく。



「おい聞いたか……」
「殺してやるって言ったぞ!」
「ああ、俺たちのことだ!!」



ああもう、面倒臭いことになった。



エレンを見つめる目は皆化け物を見るようだった。


エレンは切れたはずの左腕が戻っていることに驚いているのか、ほつれた袖を引っ張っている。




「イェーガー訓練兵!!意識が戻ったようだな!!」


「!?」


「今貴様らがやっている行為は人類に対する反逆行為だ!!貴様らの命の処遇を問わせてもらう!!下手にごまかしたりそこから動こうとした場合はそこに!榴弾を打ち込む!!躊躇うつもりなどない!!!」



話なんてするつもりないくせに。そう思いながらも下手なことはできない。どうすれば……



「率直に問う。貴様の正体は何だ?人か?巨人か?」


「し、質問の意味がわかりません!!」



キッツは一瞬黙ったが、次の瞬間には心底汚いものを見る目でエレンを見て怒鳴りつける。



「シラを切る気か!?化け物め!!もう一度やってみろ!!貴様を粉々にしてやる!!!一瞬だ!!正体を現すヒマなど与えん!!!」


『何を根拠に彼を悪だと決めつける!!』


「大勢の者が見たんだ!!お前が巨人の体内から姿を現した瞬間をな!!」


『……は?』


「我々人類はお前のような得体の知れない者をウォール・ローゼ内に侵入させてしまっているのだ!!たとえ貴様らが王より授けられし訓練兵の一人であってもリスクの早期排除は妥当だ!!私は間違っていない!!」



呆れた。考える気がない。これが本当に隊長なのか……



「今にもウォール・マリアを破壊したあの鎧の巨人が姿を現すかもしれない!!今我々はあ人類存亡の危機の現場にいるのだ!!もう5年前の失態は許されない!!」



ギャーギャーうるさい。自分達の危機感が下がってたことを棚に上げて……



「わかったか!?これ以上貴様相手に兵力も時間も割くわけにはいかん!!私は貴様らに躊躇なく榴弾を打ち込めるのだ!!」



もう黙って……



隣に立っている女性が何か言っている。




“「彼らの反抗的な態度は明らかです。有益な情報も引き出せそうにない……おっしゃる通り、兵と時間の無駄です」”



もうやめて……壊れる……



『聞こえているぞリコ・ブレチェンスカ!!!!』


「!?」



もう散々だ。


こんな人類に未来があるのか?救う価値はある?



『……!、ミカサ……』


「私の特技は……肉を削ぎ落とすことです。必要に迫られればいつでも披露します。私の特技を体験したい方がいれば……どうぞ一番先に近付いてください」


「「「!?」」」



怖い子だ……
ブレードを構えて一歩前に出るミカサがすごく恐ろしい。15歳には見えない。



「ミカサ、人と戦ってどうするんだ?この狭い壁の中の何処に逃げようっていうんだ?」


「相手が何処の誰だろうと、エレンが殺されるのは阻止する。これ以外に理由は必要ない」


「話し合うんだよ!誰にも……何にも状況がわからないから恐怖だけが伝染しているんだ!」



もうやめて……



「もう一度問う!!貴様の正体は何者だ!?」



お願い……



「じ、自分は……」











壊さないで……









「人間です!!」








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