漆黒の天使
□seven
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『赤いシャム猫?』
「ああ、最近そのニュースで持ち切りだぜ」
『……全然知らない』
「ったく……」
今日は、というか今日も毛利探偵事務所に遊びに来ていた私。最近毛利さんに娘がもうひとり増えたみたいだと言われた。それぐらい通い詰めているのだ。
そんな中久しぶりにちゃんと見たニュースでは随分と物騒な内容が流れている。それが先ほどコナンが言った赤いシャム猫と名乗る犯罪集団のしわざらしい。
《なんや、魅也もおるんか》
『ん?』
声が聞こえて来てコナンを二度見する。すぐ側に携帯が置いてあり、ディスプレイには服部平次の文字が。ひょいと拾い上げて耳に当てると平次さん?と声を出す。
《久しぶりやなぁ》
『それほど経っていないと……でも何故電話を?』
《赤いシャム猫っちゅう集団の話をしてたんや》
テレビでは尚ニュースが続いている。何でも殺人バクテリアをある研究所から盗み、爆破させたんだとか。
一週間以内に次の行動を起こすと犯行声明も出ている。何故そんな事をしたのかはまだわかっていないと……
『……変ですね』
「《え?》」
ハモってそういう2人に少しキョドってしまう私がいる。次の言葉を待つように黙る2人に恐る恐る言葉を繋いだ。
『その……わざわざ研究所を爆破しなくてもいいのになぁと思いまして』
《やっぱキレるな》
『え?』
「俺達もその話をしてたんだよ」
コナンは新聞の一面を広げるとそういう。そこにはニュースで放送していた内容が書いてあるがそれ以上の情報はない。爆破された研究所が赤い炎と黒煙を上げている写真がデカデカと載っていた。
《そーいや工藤、その期限の最終日にあのキッドの爺さんの飛行船乗るちゅーてなかったか?》
「ああ」
『飛行船?』
コナンは先程の新聞を1枚めくる。するとそこにはキッドが次郎吉さんに予告状を出したと大々的に載っていた。
天空の貴婦人、レディー・スカイという宝石で作られた指輪をキッドが空に浮かぶ船から華麗に盗み出すとかなんとか書かれているが、最後まで読む気は起きない。序盤の十数行で切り上げた。
『キッドって予告状出すんだ……』
「ああ、いつも1週間前とか1ヶ月前に出してくる」
『でも前のは……』
「あれは3日前だったな。珍しいタイプだよ。そんな事滅多にねぇしな」
さすがキッドキラーと呼ばれているだけある。そこまで動向がわかるという事は結構仲が良いのではと思ったが、本人に言っては顰めっ面されるだけだからやめておこうと決める。
《まあその日まで赤いシャム猫が何もせーへん保証もないからな。気楽におればええで》
殺人バクテリアが盗まれているというのに随分お気楽だ。そのまま歌を歌うように言葉を繋げる平次さんは楽しそうである。
《因みに飛沫感染するらしいで。特に“子供”はかかりやすいから気をつけなはれ、小さくなってしもうた工藤君♪》
「……てめぇ、」
仲が良いのはわかったから漫才をしないでほしい。毎度吹き出しそうになるから困るのだ。
まあそれはともかく、
『飛行船か……』
「ん?」
乗ったことないからいいなぁ……そう思って出た単語がこれだ。するとお茶を持ってきた蘭がそれを聞いたようだ。飛行船がどうしたの?と問いかけてくる。コナンは平次さんからの電話をブチ切りするといつものように猫を被って答えた。
「ねえ蘭姉ちゃん、魅也さんも園子姉ちゃんの飛行船に乗せてあげられないかな?」
「ああ、そういうことね。園子から連絡来てない?」
『連絡?』
蘭の言葉に携帯を見るとそこには園子からのメールが。飛行船に乗れる事と日時、集合場所が記されている。
『来てた……』
「でしょう?園子が忘れるはずないもん」
『……そうですね』
彼女達とはもう友達なのだ。こうやってお誘いだってくる。なんだか嬉しい気持ちになって笑みが零れた。
「コナン君の友達も来るし、大勢の方が楽しいからって前に話してたんだ。連絡が来てないなんておかしいなと思って」
「よかったね!」
『……そうですね』
小学生らしく笑う彼に私も同じように笑う。
でもね……平次さんに後で怒られるよ、多分。
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