漆黒の天使

□zero
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「よかったわね。ボスからの新しい命令ですって。ラムも公認よ」


「誰がこんなふざけた事を!!」


「だからボス達だってば。黙って従っときなさい。その単細胞で殺さなくてもいい人間を何人も葬っているんだから、その抑止としての事だと思うわよ」


「……チッ」



2人の会話が終わった頃合いを見計らってあのと声をかける。ベルモットは歩き始めながらも携帯の画面を見せてくれた。



『……彼と一緒にいろっていう事かな?』


「まあそういう事ね」



文面にはジンの面白い姿がみたいにからキティをジンの女として扱えと書かれていた。
私の言葉に機嫌を悪くしたのかジンは再び舌打ちをする。


こっちだって嫌です。見張りとかじゃなくて女って文面が私にとてつもない虚無感を与えた。


でもまあこの組織に関わっていてGPS無し、見張りなし、盗聴器なしっていうのが奇跡に近いから多少の事では文句を言わないで置こうと決めていた。
何もわからない私がこの世界で安全に生きて行くためにはこれが最適だろう。


それが例え組織一短気で残虐で他人を人間と思っていないような野郎の女として扱われるとしても……やっぱり嫌だな。



「てめぇにそんな顔をされる筋合いはねぇ」


『………』



顔に出ていたのか、気をつけなければ。
カチャリと銃を私に向けるジンは作品の人物と同じのようだ。ベルモットはそんな印象を受けなかったのに。



バァンッ!!!!!
『!』



何も言わなかったからだろうか。セーフティを解除して銃をぶっ放してきた。髪を風が撫でる感覚がしたが反応することはできずに突っ立ったままだ。



「ジン、ボスのいう事に逆らうの?」


「……チッ」


『……そんなに嫌ですか?』



銃をぶっ放されても何も言わなかった女が突然口を開いたのか少し驚いている。意外と表情は豊からしい。
ちなみに何も言わなかったのではない。何もいえなかったのだ。怖いと思う前にいろいろと終わっていったから怖がる暇がなかった。それに勝手にイライラされてるとか……こっちだって機嫌が悪くなる。



『安心してください。貴方が思っている以上に……私も貴方の事が嫌ですから』


「!!」


「ぷっ、あっはっはっは!!!」



ベルモットが大声で笑った。大笑いしても綺麗ですね。


ジンは癪に障ったのか青筋を立てている。再度私に銃を構えるがアニキと呼ぶ声に構えるのをやめた。



「あらお母さんの登場よ」


「………」


「兄貴……って戻ってたのか」


『ウォッカ……だったっけ?』


「あってるわよ」



ここに来るまでの間に前まで仲良くしていた幹部の顔と名前は教えてもらっていた。ウォッカもそのひとりだ。


その彼を引き連れてジンは消えて行く。相当面白くないようだ。ベルモットが思い出し笑いしながら私を部屋へと案内してくれた。


基本的な構造を頭にいれて組織のビルを去る。私にはちゃんと家があるからだ。……まあ他人のもの同然なんだけど。


家までベルモットが送ってくれた。その別れ際に携帯を渡される。爆発事故で画面が割れたかららしい。データは既に移してあると。



『……ねぇベルモット』


「………」


『爆発事故って、組織が起こしたの?』


「Yes.」


『ベルモットは何で殺さなかったの?私達を殺すために爆発事故を起こしたんじゃないの?』



疑問に思っていた事を口にするとベルモットは綺麗な動きで人差し指を立てるとチッチッチと言いながら動かす。



「A secret makes a woman woman. 女は秘密を着飾って美しくなるものなのよ」


『……うん、理由になってないけどそれでいいや』



英語で話す彼女かっこいいな〜なんて思いながら笑って手を振る。see you again♡とハートを飛ばしながらかっこいい外車を乗り回して行く彼女はとても美しい。


その余韻に浸りながら無駄に濃くて長い1日が終わった。



思った以上にこの意味不明な状況に順応している私がとても逞しく見えたのは気のせいではないはずだ。








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