美しい残酷さ

□neun
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所属兵団を決めた次の日から、私達は長距離索敵陣形の形態を頭に叩き込んでいた。


今この場にエルヴィンもリヴァイもハンジさんもいない。リヴァイ班の皆がいるだけだ。



「魅也さん、どうかしましたか?」


『!、ううん、何でもないよ』



ペトラにそう言われてビクついてしまう。自分ではそうでもないと思っていたんだけど、昨日のことが相当ショックだったようだ。何に衝撃を受けたのか自分でもわからないけど。



『それで配置が何だった?』


「俺達特別作戦班はここです」



グンタがそう言って紙に書いてある一つの隊を指差す。



「五列中央・待機だ」


「ずいぶん後ろなんですね」



エレンがそう言った。そりゃ君のことを守るためだからね。そう思いながらも口には出さない。



「この布陣のなかで最も安全な配置だろう。補給物資を運ぶ荷馬車よりも手厚い待遇だ。この壁外遠征が極めて短距離なのも、お前をシガンシナ区に送るための試運転だからだ」


『とりあえず行って戻ってくるってことか……』



私が初めて壁外調査に混ぜてもらった時もかなり短距離だった。……あれ?何でだ?
私のためにわざわざ短距離にしてくれた?……いやいやさすがにそれはないわ。どれだけ重要人物なんだ。



「……あの、」


『?』


「オレにはこの力をどうしたらいいかもまだわからないままなんですが……事をこんなに進めてしまって大丈夫でしょうか」



エレンが不安そうにそう言うが私は少しだけ笑う。随分と大人になったものだ。



「……お前はあの時の団長の質問の意味がわかったか?」


「え…?」



グンタがそう言ってエレンを見るとエレンは固まる。きっと巨人が殺された時の話だろう。



「先輩方にはわかったんですか?」


「いいや」
「いいえ」
「さぁな」
「俺もさっぱりわかんなかったぜ」



おいおい……思わず苦笑してしまう。エレンに「魅也は?」と聞かれるが『どうでしょう?』と曖昧な返事をしておいた。



「もしかしたらこの作戦には行って帰ってくる以外の目的があるのかもしれん。そうだとしたら団長はそれを兵に説明するべきではないと判断した。ならば俺達は行って帰ってくることに終始するべきなのさ。団長を信じろ」


「………」


『大丈夫よ』


「魅也……」


『エルヴィンはいらないと思ったものは容赦なく捨てるけど、信頼している仲間には最上の敬意を払う人だから』


「………」



エルヴィンには巨人を殺した犯人が誰だかなんとなくわかっているのだろう。


……あ、そっか。そういうことか。


気づいた表情は誰にも見られなかった。





「!、あいつら……」



今日の訓練はもう終わりと言われた時だった。エレンが何かに気付いてそう声を上げた。
エレンの見る方を向くと私達と同じように調査兵団のエンブレムをつけているミカサ達が見えたのだ。



「オルオさん、ちょっと同期と話してきてもいいですか?」


「チッ……さっさと行けよ」



舌打ちしたわりには優しいや。やっぱりリヴァイの真似してるのかな?



「オイ!!」


ビクッ!!
「!!」



大きくビクついたミカサがこちらに振り向く。でも振り向く前からエレンだとわかっていた表情だ。
『ミカサ、久しぶり』と笑って言うとミカサは私に視線を移して飛びついてきた。



「しばらくぶりに会った気がするぞ」


「エレン……」


『アルミンも元気でよかった』


「魅也さん……」



アルミンは嬉しそうな顔をして私を見る。



「エレン、何かひどいことはされなかったの?体を隅々まで調べ尽くされたとか、精神的な苦痛を受けたとか」


「ね、ねぇよそんなことは」


「あのチビは調子に乗りすぎた。いつか私が然るべき報いを……」


「まさかリヴァイ兵長のことを言ってるのか?」


『ブフッ!』



私から離れてエレンと話していたミカサだったが、そのチビ宣言で思わず笑った。


リヴァイがチビだったら私もチビだとミカサに言えばミカサは可愛く笑って「姉さんは可愛くて綺麗でかっこいいからいいの」と言われた。ミカサ大好き。エレンと身長同じぐらいだけど立派な妹だ。



「エレン!」


「!、お前らも調査兵になったのか?」



コニーがこちらに気付いて近付いてくる。側にはクリスタ、サシャ、ベルトルト、ライナーがいる。
エレンも私の隣にいたのに確認しなかったのか。……いや、私が泣いていたからか。



「てことは憲兵団に行ったのはアニとマルコとジャンだけで、あとは皆駐屯兵かそれ以外ってことか……」



エレンがそう言ったことでフラッシュバックした。マルコの名前が私の頭の中に響く。



「マルコは死んだ」


「!、何でお前がここに……って、今……今なんて言った?」


『エレン……』


「マルコが……死んだっていったのか…?」



驚いた様子でジャンを見ていたエレンだったが、ハッとして私の方に振り向く。


それに私もビクついた。



「おい魅也、お前知ってたんだろ……何で!!!」


『………』


「魅也さんを攻めんじゃねえ。お前が聞かなかっただけだろ」



ジャンはそういって庇ってくれた。優しい人になったものだ。








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