美しい残酷さ

□acht
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未だに大砲の音が聞こえる昼。私はエレンに合わせろと憲兵団に言い続けていたがダメの一点張りで腹を立てていた。


エルヴィンに文句を言ったところ、今話せるように手配していると言われてまた怒った。完全なる無駄骨だったのだから怒らせてほしい。



『まったく、エルヴィンも教えてくれればよかったのに』


「魅也が先に行動したんでしょう?」


『ハンジさん、それ以上口答えしますと巨人の捕獲と私の身体実験、協力しませんよ?』


「それは横暴でしょう!?」



最近ハンジさんの扱いがリヴァイに似てきた。まあハンジさんからそう言われたんだけど。


私は巨人に襲われないとエルヴィン達に明かしたところ、皆そうなんだ、ぐらいの反応で終わった。ハンジさんを除いて。


今巨人を掃討しているからそれが終わったら捕獲した巨人で試してみようということになったのだ。
人類の勝利に繋がるんだったら仕方がないかと思って捕獲も手伝っている。


捕獲が実行されたのは夕暮れ時だった。


そのまま捕まえようとしていたハンジさんの頭を叩いて止める。



『バカですか。しかもあんなに大きい巨人なんて……』


「これだけたくさんいるからいいかな〜って」


『死にたいんですか!小さい奴にしなさい』


「え〜!」


「分隊長、言う通りにしてください!!」



モブリットさんに言われてようやく実行する。
そして4m級と7m級を1体ずつの捕獲に成功したのだ。



「うっひょーい!!!!成功だあー!!!!」


「分隊長!!早く逃げてください!!他の巨人が!!」


「この調子でどんどん捕まえるぞー!!」


『2体だけって約束でしょう!?』


「でも〜」
『約束が守れないんだったら2体とも殺りますよ!!』


「それはやめてぇええええ!!!!!!」



この一件で後に皆から更にペルセポネ様と呼ばれるようなった。



夜中になる前になんとか討伐は終わったが、もう夜だからという理由で明日からトロスト区内の死体の片付けをすることになった。


片付けとは嫌な響きである。




「昔々、遠い山の奥に、人間を食料として狩っていた民族がいた」


「また始まったよ」
「ハンジ分隊長の命名式」


『命名式?』



ハンジさんは巨人に名前をつけるらしい。変な人だ。



「その一族にいた長の名前をこの子達に名付けようと思う。4m級の子がソニー、7m級の子がビーンだ!!」


『?』


「明日からの研究が楽しみだな〜ヌフフ」



ハンジさんの言葉に首を傾げる。


巨人を運び終わった後、シャワーを浴びていつものように多目的室に向かった。一緒じゃないとハンジさんはシャワーを浴びないからだ。


ふたりで向かうとリヴァイとエルヴィンが紅茶を飲んでいたので驚く。



『珍しいですね』


「リヴァイが紅茶を飲んでいたものだからね。これもいただいているよ」



エルヴィンが食べかけていたクッキーをかざす。私が最近いつも焼いて置いているものだ。



『ハンジさんも飲みますか?』


「うん!魅也のクッキー美味しいんだよね」


『そっちですか』


「紅茶が美味しく飲めるんだ!」


『紅茶に合わせて作ってますもの』



皆の分をまとめて入れる。出すと皆一斉に飲んで一斉に吐息が出た。


思わず笑ってしまう。



「やっぱり魅也の入れる紅茶は美味しいね〜」


「悪くない」


「素直じゃないね」


「黙れクソメガネ」



仲は相変わらずよろしいようで。




「それはともかく、今日はありがとうね魅也!かなりあっさりと捕まえられたよ」


「巨人の捕獲は15年ぶりなんだ。私からも礼を言う」


『ハンジさんの手伝いをしただけで大したことしてないですよ』



最近エルヴィンと話していると落ち着く。父親と話しているみたいだ。私の父親はこんなに頭の切れる人じゃないけど物事の核心はよくわかっている人だった。



「聞いてよリヴァイ!!魅也ったらね、私が巨人を捕まえようとしたら『そのまま捕まえるつもりですか!?』って怒ってきてね〜」


『当たり前でしょうが。あのままだったら食べられてましたよ。モブリットさんが止めてくれたんですから』


「でね!?でね!?最初に魅也がビーンの足を切ってくれてね!!その間に捕まえれたんだ!!」


「ビーン?」


「そう!!」



リヴァイはしまったという顔をした。ハンジさんは興奮して名前の由来をまた語り始める。


なんだかな……



『あ!』


「ん?どうしたんだい?」



ハンジさんに聞かれて私もしまったという顔をした。


言わないと面倒だし、言っても面倒だ。


……諦めよう。








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