美しい残酷さ
□sieben
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今から100年以上前、人類はある“天敵”の出現により、絶滅の危機を迎えた。
なんとか生き残った人類は三重の巨大な“壁”を築き、そこで100年の平和を実現させた。
しかし5年前、その平和も終わりを告げた。
超大型巨人によって開閉扉は破壊され、100年の空腹から解き放たれた巨人により、人類は再び蹂躙された。
人類は一番外側の壁を放棄。2割の人口と3分の1の領土を失い、活動領域は二重の壁まで後退した。
だが、それと同時に人類は目を覚ます。
そして5年後、巨人を恐れず壁外への進出を試みる“調査兵団”。
希望と共に人材と資金が彼らに集中した。
この任務を託される調査兵団は人類の英知の結晶である。
一部の才覚によって調査兵団の生存率は飛躍的に向上したが、それでも尚巨人の領域への派兵には毎回3割を越す損害を伴う。
それほど人類と巨人の間には力の差が存在している。
「今に…見てろよ……お前らなんか……リヴァイ兵長が!!」
ドシュッ!!!!!
息も絶え絶えな兵士が一人、口にした名前は人類最強と名高い男。
「チッ、汚ねえなぁチクショー」
元は地下街の人間で口が悪い。しかし……
「兵…長……」
「何だ?」
「必ず……奴らを…」
「……ああ!」
人一倍厚い人情を持っていた。
「リヴァイ!!退却だ」
「退却だと…!?」
馬で駆けてきたエルヴィンがいきなり言い放った言葉に、リヴァイは眉を顰める。
「まだ限界まで進んでねぇぞ?俺の部下は犬死か?理由はあるよな?」
凄んで馬を呼ぶリヴァイ。それで寄ってくるのはボブサップぐらいだ。
「巨人が街を目指して一斉に北上し始めた」
「!!?」
「5年前と同じだ。街に何かが起きてる。壁が……壊されたかもしれない」
リヴァイは急いで部下に指示し、すぐさま馬を走らせようと準備するが、エルヴィンは彼の前に立ち塞がった。
「リヴァイ落ち着け」
「落ち着けるか!!」
「魅也のことだろう。重々にわかっている。だからこそ落ち着け」
「……チッ!」
「あの子は5年前に学んだはずだ、誰よりもな」
リヴァイは魅也のことを思い出す。
5年前のことがあってから彼女は調査兵団の帰りを一番壁外に近いトロスト区で立体機動装置をつけて待っている。
実力はミケにも引けを取らないほどの手練れだ。
無事のはず……
「早急に帰るぞ、エルヴィン」
「そのつもりだ」
魅也、どうか無事でいてくれ……
そう思いながら馬を走らせたのだった。
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