美しい残酷さ

□sechs
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850年、訓練兵は集まっていた。



「100年の平和の代償は惨劇によって支払われた。当時の危機意識では突然の“超大型巨人”の出現に対応できるはずもなかった。その結果、先端の壁ウォール・マリアを放棄。人類の活動領域は現在我々のいるウォール・ローゼまで後退した」



今日は解散式なのだ。皆真剣な表情で立っている。
私はいつものように少し外れたところでのんびりしていた。



「今この瞬間にもあの“超大型巨人”が壁を破壊しに来たとしても不思議ではない。そのときこそ諸君らはその職務として“生産者”に代わり、自ら命を捧げて巨人という脅威に立ち向かってゆくのだ!」


「心臓を捧げよ!!!!!」


「「「ハッ!!!!!」」」


「本日諸君らは訓練兵を卒業する。その中でも最も訓練成績がよかった上位10名を発表する。呼ばれた者は前へ」


「10番クリスタ・レンズ!9番サシャ・ブラウス!8番コニー・スプリンガー!7番マルコ・ボット!6番ジャン・キルシュタイン!5番エレン・イエーガー!4番アニ・レオンハート!3番ベルトルト・フーバー!2番ライナー・ブラウン!主席……ミカサ・アッカーマン!!」



ミカサの名前を読み上げられて周りはざわつく。


最後にキースに代わると話は続く。



「本日を以って訓練兵を卒業する諸君らには3つの選択肢がある!!壁の強化に努め各街を守る“駐屯兵団”。犠牲を覚悟して壁外の巨人領域に挑む“調査兵団”。王の元で民を統制し秩序を守る“憲兵団”。無論新兵から憲兵団に入団できるのは成績上位10名だけだ。後日配属兵科を問う。本日はこれにて第104期訓練兵団解散式を終える……以上!!」



最後に敬礼をして終わった解散式。私も小さく敬礼をした。









「いいよな〜お前らは10番以内に入れてよ!どうせ憲兵団に入るんだろ?」



ジャンに話しかけた男はまるで酔っているようだ。飲んでいるのは別にお酒ではない。



「ハァ?当たり前だろ。何のために10番内を目指したと思ってんだ」


「俺も憲兵団にするよ。王の近くで仕事ができるなんて……光栄だ!」



マルコがいつものようにそう言った。


そんな彼の頭を掴むジャン。



「まだお利口さんをやってんのかマルコ〜」


「ブッ!!」


「言えよ本音を。内地にいけるからだろ?やっとこのクッソ息苦しい最前線の街から脱出できるからだ!!内地での安心で快適な暮らしがオレ達を待ってっからだろうが!!!」



今まで大変だったのもあるだろうが、机をガンガンと叩きながら大声でそういう彼に聞いていた皆はざわつく。もしくは引いている。



「は、恥を知れよ!少なくとも俺は……」
「あ〜すまん。オレが悪かった。お前は優等生だったな。しかしお前らならどうする?」



ジャンは樽ジョッキをざわつく皆に向けて言い放つ。



「オレ達が内地に住める機会なんてそうそうないんだぜ!?それでも“人類の砦”とかいう美名のためにここに残るのか?」



この言葉に皆黙り、自分達もいけるなら憲兵団に入って内地で暮らしたいという旨を発する。



「だよなぁ、みんな内地にいきたいよな……」



興奮して立っていたジャンはやっと座る。


私はびしょ濡れになったマルコにタオルを渡した。ありがとうございますと受け取ってくれるが、私は厳しい目つきをしていると思う。



「で、お前らは?」


「僕は憲兵団を志願するよ」


「私もだけど……あんたと一緒だとは思われたくないわ」



ベルトルトは普通だったけど、アニがすごい嫌悪をもった顔でジャンを睨む。が、ジャンはハハハ!と笑うだけだった。



「なあ、内地が快適とか言ったな。この街も5年前まで内地だったんだぞ」


『エレン……』


「ジャン、内地にいかなくてもお前の脳内は“快適”だと思うぞ?」


「ブフーッ!!」
「うわあぁあ!!」


『ア、アルミン!!』



エレンの言葉でツボったのかライナーが鼻から飲み物を吹き出した。それがアルミンにかかる。


急いでタオルを持ってくると謝りながら自分の持っていたハンカチでアルミンを拭いているライナーがいた。


つっかかろうとしているエレンを引き止めているミカサ。


ジャンはそれをチラリと見ただけですぐにエレンに視線を戻す。椅子に座ると随分と落ち着いた様子で話し始めた。








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