美しい残酷さ
□funf
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847年、寒さが弱まり、もうすぐ春になる。
年が明けてすぐに調査兵団から訓練兵団の兵舎へ住み移った。
私はこの世界についてあまりにも無知だ。だからこそいろんな人と衝突してきた。それを改善するには訓練兵と同じように訓練するのが手っ取り早いだろう。
何より、巨人が私を無視する理由が知りたかった。
「おい、貴様……」
「ハッ!!!」
今私は遠目で今期の南方訓練兵団の通過儀礼を見ていた。
兵団からいなくなったと思ったらこんなところにいたんだ……キース。
「貴様は何者だ!!!?」
「シガンシナ区出身、アルミン・アルレルトです!!!!!!」
アルミンってそういや登場人物紹介で乗ってたや。今思い出した。
「そうか!!バカみてえな名前だな!!!親がつけたのか!!?」
「祖父がつけてくれました!!!!!」
「アルレルト!!貴様は何しにここに来た!!!?」
「人類の勝利の役に立つためです!!!!!」
「それは素晴らしいな!!貴様は巨人のエサにでもなってもらおう!!!三列目!!後ろを向け!!!!!」
頭を掴まれて後ろを向かされるアルミン。エレンもミカサも生きている、よかった……
にしてもキースめ、なかなかやりますな……
あの人はもともと観察眼が凄かった。アルミンにはあれだけ恫喝していたが、エレンやミカサ、他にも何人かには何も言わない。
よくわかってるなあと思いながらも何か違う空気を感じたのは何故だろうか……
「貴様は何者だ!!!」
「トロスト区出身、ジャン・キルシュタインです!!!!」
何だ、あの子……不思議な感じがする。
「何のためにここに来た!!!?」
「っ……憲兵団に入って、内地で暮らすためです」
ああ、そういうことか。
馬面男はキースに頭突きを食らわせられていてしゃがんで痛がってた。それに笑ってしまう私は性格悪いかもしれない。
「貴様は何だ!!!」
「ウォール・ローゼ南区ジエナ村出身、マルコ・ボットです!!!!!」
「何しにここにきた!!!!
「憲兵団に入り、王にこの身を捧げるためです!!!」
「……それは結構なことだ。目指すといい。だが……王はきっとお前体なんぞ欲しくない」
『ブフッ……』
ごめんなさい、笑っちゃいました。
呆然としているそばかす君からもう次へいく。
「貴様だ!!貴様は何者だ!!!!」
「ウォール・ローゼ南区ラガコ村出身、コニー・スプリンガーです!!!!」
坊主君はそう言って左手で敬礼をする。
そのためキースの頭を掴まれてすんごい顔になっている。
「逆だ、コニー・スプリンガー……最初に教わったはずだ。この敬礼の意味は“公に心臓を捧げる”決意を示すものだと……貴様の心臓は右にあるのか、コニー?」
キースってあんなに怖かったっけ?
そう思いながら見ていたら何やら口をモグモグと動かしておる女の子が見えた。さすがのキースも私と同じように固まる。
「……貴様は何をやっている?」
「………」
そう言われても今だに芋を食べるもんだからキースに詰め寄られている。
「貴様だ!!貴様は何だ!!!」
「ウォール・ローゼ南区ダウパー村出身、サシャ・ブラウスです!!!!」
「サシャ・ブラウス……貴様が右手に持っているものは何だ?」
「“蒸した芋”です!!調理場に丁度頃合いの物があったのでつい!!」
あれ私が夜ご飯のために蒸したやつ……
「貴様、盗んだのか……何故だ。何故今……芋を食べ出した?」
「冷めてしまっては元も子もないので、今食べるべきだと判断しました」
「……いや、わからないな。何故貴様は芋を食べた?」
「?……それは“何故人は芋を食べるのか?”という話でしょうか?」
あまりのぶっ飛びっぷりに周りもキースも固まる。
私はというとものすごく笑ってた。
空気が固まったかのような雰囲気に青ざめる人がいる中、芋少女は何かに気付いたように声を上げて、次に舌打ちをする。
そして芋を割ると、小さい方を渡す。
「は……半分どうぞ」
「……半分」
芋少女はこれでもかというぐらいのドヤ顔をした。
まあ面白いからいいよね。
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