美しい残酷さ
□drei
1ページ/10ページ
−−−−−。。。
木々は赤や黄色に染まって風が涼しくなっていく頃、魅也は毎日普通に過ごしていた。そんな最中、ハンジはふと思ったことを言った。
「……ねえリヴァイって魅也の誕生日知ってるの?」
「………」
今いるところは夜の食堂。ハンジ、リヴァイ、エルヴィン、ミケの四人は何をするわけでもないが偶然集まっていた。
質問を投げかけられたリヴァイは最近ハマりだした夜中の紅茶を楽しんでいたのだが、ハンジの言葉に少し噎せる。
「へえ〜知らないんだぁ」
「何が言いたいんだクソメガネ」
最近すっかり定着した愛称でハンジを呼ぶ。彼女はヌフフと気持ちの悪い声で笑いながらテーブルにうつ伏す。
「いや〜愛しい奥さん誕生日も知らないのかと思ってね〜」
「だから反対だったんだ」
「何が言いたいんだエルヴィン」
「元々結婚するなんて許可したくなかったよ。私は魅也のことを娘のように可愛がっていたのに」
「こんな獣に盗られちゃあエルヴィンも不憫だねえ〜」
ガッハッハと笑うハンジの頭にリヴァイは拳を振り下ろす。止まったハンジは放って置くが、さすがに気になってしまう。
「……あいつ、誕生日を聞いてきた」
「ミケにかい?」
「お前の誕生日をだ」
彼女はミケにリヴァイの誕生日を聞きに来たのだという。
その事実に少なからず驚いたリヴァイは紅茶を飲み干し、片付けて自室に戻った。
「子供だね〜」
「自分の奥さんが弄られているんだ、文句も言いたくなるだろう」
「リヴァイはあの一件以来大人になったんだと思うんだけどな……」
ハンジの言葉にエルヴィンは頬杖をつく。
随分と規律を重んじるようになったし、考え方が大人になった。
間違いなく彼女のおかげだろう。なんといってもあの子のおかげでリヴァイが初めて壁外調査に行ったときのメンバーが殆どやめなかったのだ。
いつもは巨人を見てもう戦いたくないと思い、駐屯兵団へ転属を求める者が大勢いるというのにそのときは激減した。
ましてやフライア様と兵士にも民衆にも慕われるようになったのだ。
「何かいいことでもあるのかい、エルヴィン?」
「……いや、面白いなと思ってね。ミケならわかるだろう」
「………」
最初に彼女の匂いを嗅いでも鼻で笑わなかったのだ。
「……不思議な匂いだった」
「何か変態チックだね」
「……今まで嗅いだことのない匂いだ」
「そうか……」
「無視しないで〜」
あんなにか弱く見えた女の子がたった半年で大人になってきている。
これでいいのだろうかと悩むエルヴィンの肩をハンジはポンポンと叩き、部屋を後にする。
「……ミケが飛ばされた時、あの子の瞳が赤く見えた」
「………」
「何か重要なことを示しているような気がしてならない」
彼女はいったいどんな力を持っているのだろうか。
今まで聞いたことのないようなことを知っている博識さがあるのに、常識と言われることは全くしらない。
このアンバランスな感じがエルヴィンにはわからない。
夜が更けていくことにどうしようもない焦りを覚えるようになったのはいつからだろう。
彼女はそれさえも忘れさせてしまうような純白さがあった。
だからこそ、あの瞳を信じたかったのかもしれない。
おぞましさと希望に満ち溢れたあの瞳を……
_