美しい残酷さ

□zwei
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ここにきて二ヶ月。



バタンッ!
「姉貴!!ただいま!!」


『おかえりなさい。ドアに鍵がかかってたらどうするの?』


「壊す!!」


「リヴァイに怒られんぞ」


「夕飯抜きだ」


「ええーっ!!そりゃねえよ兄貴!!」


『作ってるの私だからちゃんとあるよ』


「誰が調達してやってると思って……」
『皆でしょう、リヴァイ』


「……チッ」


「もう頭が上がんねえなリヴァイ」


「ファーラン、夕飯抜きだ」


『ファーランの分は抜いてもいいよ』


「なんでだよ!!」



変わったことが三つあった。


一つはリヴァイと呼び捨てにするようになった。
敬語をやめろと言われたが結局これぐらいしかまともに直らなかった。
今では敬語とタメ口が混沌とするおかしな言葉を話すことが増えた。


一つは皆とこんなふうにおちゃらけられるようになった。
自分でもそう思うぐらい本当に仲がいい。


そしてもう一つはご飯を作るようになり、洗濯もするようになったこと。掃除は元からしていたから家事は全般的にするようになった。


しかしその代償というかなんというか……イザベルはリヴァイたちと共に窃盗団として動いているが、私はこのアジトで家事をする日々になっていた。


役に立てることは嬉しいし、頼りにしてくれているんだと思うようにはしているが、前よりも召使のようになってしまっている現状がツライ。



「……姉貴?」


『ん?』


「最近元気がねーぞ。大丈夫なのか?」



ああ、本当に可愛い。



『イザベルが心配してくれるだけで元気になれるよ。ありがとう』


「……本当か?」


『本当本当』


「だったらいいけど……無理しないでくれよ。俺、姉貴が作ってくれる飯、楽しみにしてるんだからな」


『うん!今日はハヤシライスだよ』


「うわあ!!何それ!?」


『手を洗っておいで』


「はーい!!」



イザベルぐらい素直だったらいいんだけど……まったくこのふたりは。



『どうかしました?リヴァイ、ファーラン』


「………」
「別に何でもねえよ」



いつも通りのリヴァイと何か心配している様子のファーラン。
何でもないんだったらそんな顔で見ないでしょうに。



「姉貴!これが“はやしらいす”っていうのか?」


『ん〜、ビーフシチューに近いかな。でも牛肉は入ってないから』



唯一あったトマトぐらいだよ、ハヤシライスの要素が入ってるの。



「ビーフシチュー?それって貴族がよく食べるものだよな」


『そうなの?でもそれをアレンジした感じだよ』


「ふーん……まあいっか!いっただっきまーす!!」



ルーはともかく……如何せんこの世界には米がない。


日本人の私にはツライ。が、肉や塩、砂糖が高級品とされている世界だ。仕方がない。



「うんめーっ!!!!!」


『フフッ、大袈裟だな』


「そんなことねえよ!!なあファーラン」


「ああ。お前の作る料理は全部うまい。きっと貴族の食ってるやつよりうまいだろうな」


『貴族の料理、食べたことあるの?』


「まさか」



ファーランの茶化しにも一杯食わせれるようになってきたのは成長だろう。



「なあリヴァイ。お前もそう思うだろ?」



そこでリヴァイにふるところがまだまだなんだよファーラン。



「………」


『……リヴァイ、美味しくない?』


「……悪くない」



リヴァイの一挙一動には毎度びくついてしまう。怯えとは違う何かが私をそうさせる。


リヴァイの言葉にホッと一息つく。



「くだらねえこと言ってないでお前も食え」


『……後で食べますよ』


「………」








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