美しい残酷さ
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「魅也ー!!」
『ん?』
「また勉強?いくら受験だからってそんなに勉強ばっかりしてたらバカになっちゃうよ」
『………』
「冗談!!冗談だから真顔はやめて!!アンタの真顔ってめっちゃ怖いから」
夕暮れの橙色の太陽が教室を照らす11月末。私とこのとっても元気な友人だけしかいない教室は声だけが響いている。
彼女とはたいして仲がいい訳でも悪い訳でもない、でも気付いたら近くにいるような関係だった。
だけど名前で呼ばず、名字で呼んだことしかなかった。
それは彼女だけに関わらず、このクラスの皆でもそうだ。皆と大して話したことはない。だからって仲が悪いわけではない。
何回クラス替えしてもクラスに完全に馴染むことはなかった。だからといって馴染めない訳でもなかった。
何にしてもそんな私。
何事も中途半端。
「魅也?」
『ん?』
「もう受験終わってなかったっけ?」
『……うん』
「じゃあなんで勉強してるの?」
『………』
今年で18歳の私、秋桜魅也。
大して頭がいいわけでもないS大学に進学が決まった普通の頭の女。
身長156センチ、体重50キロ。高くも低くもなければ重くも軽くもない。
こんなところまで中途半端なのか。
「ねーえ」
『……?』
「……まあいつもこんな感じだからなんとも思わないけど、大学にいってもこんなんじゃ友達出来にくいよ」
『……そうだね』
「今日、うん以外の返事初めて聞いた」
本当、言いたいことが言えない自分が情けなく感じる。
勉強道具をゆっくりと片付けていくと彼女も帰る準備をし始める。
「魅也はさ……自分から壁を作っちゃってるんじゃないかな?」
『……壁…』
「世界は広いんだよ〜!ほら、今だってこーんな大きな空が広がってる」
校舎からでれば一等星が見え始めるほど空はオレンジ色から藍色へと変わっていた。
『……壁じゃないよ』
「え?」
『殻だよ』
そうとだけ言って彼女置いて先に帰った。
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