美しい残酷さ

□acht
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その日の夜、たくさんのキャンプファイヤーが広場を覆っていた。しかし、その中にあるのは全て死体だ。


おぞましいほどの異臭がしたが、誰も鼻を噤む人はいなかった。



「全部……無駄だったのか?」


『コニー?』



頭を抱えて座り込んでいる彼は涙目だった。


ジャンは落ちている小さな骨を拾ってジッと見つめている。


今回私と仲の良かった人はそれほど死ななかった。普段たくさん死んでいるのを見ていたから感覚が狂っていたのかもしれないが……



「今、何を……するべきか……」



ジャンはいつかマルコに言われた言葉を繰り返す。そして拾っていた骨をギュッと握り締めて立ち上がると、同期の皆に向かって歩いていく。



「おい、お前ら……」



皆彼を見る。



「所属兵科は何にするか決めたか?」



ジャンは握り締めていた拳を震わせるほど更に強く握り締める。



「オレは決めたぞ」


『………』


「オレは……オレは、……調査兵団になる」



ジャンの言葉に返す者は誰もいなかった。しかし彼はジッと火柱を眺めている。



「……?、魅也さん?」


『へ?』



間抜けた返事をするとジャンは近寄ってきた。何だと思っていたらジャンは私の頬にそっと自分の指を滑らせた。



『……泣いてた?』


「はい」


『そっか……』



自覚すると更に涙が溢れてくる。これはもう仕方がない。



『ありがとうジャン』


「あ……」



キャンプファイヤーがたくさんある中に入っていく。とても熱い。


空に向かって少し大きく深呼吸しては胸の前で祈る。



『♪〜♪♪〜』



そして歌った。


こういうのは気持ちが大事だ。
最初は何をしているんだという表情で私を見ていた周りだったが、じきに皆涙を流し始める。


これは死んだ皆に対するレクイエムだ。


この世界に不満しか残っていないかもしれないけど、できるだけ安らかに眠ってほしい。


私の気持ちは届くだろうか。


死んでしまった皆に巨人を駆逐してくれと呼びかけられているようだった。

















「何してたんだ」


『へ?』



部屋に戻るとリヴァイから突然そう言われた。
変な声で返事したから睨まれる。



「赤い」


『えっと……歌ってた』



頬に触れられた時に答えたからそのあとにデコピンされた。
この世界にもデコピンってあるんだ。てか痛い。



「歌っててここまでになるのか」


『いや、炎に囲まれてやってたから……痛っ!!』



再度デコピンされる。
次は横着せずにちゃんと伝えたところ、一応はわかってくれた。



「エルヴィンから言われたが、明日巨人から出てきた小僧と面会できるそうだ。まだ目覚めていないそうだが……」


『本当!?じゃあ早く寝ないと!』



布団にさっさと潜り込むとリヴァイも布団に入る。


いつものようにリヴァイに抱き着くような形で寝転がると、リヴァイは大人しくしていた。



『今日は嫌がらないんだ』


「今日は積極的だな」


『フフッ、明日はいいことがあるから!』


「………」


『リヴァイも嬉しそうだね』


「お前の敬語がとれてきたからな」



お互い笑うとそのまま眠りに落ちる。


殺伐とした世界でも、これぐらいはいいよね……


目を閉じると今日のことが浮かんでは消えていく。私はこの世界が愛しいのだ。例えこんなに辛いことがあっても……








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