美しい残酷さ

□sieben
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エレンの言葉に一瞬で静けさに包まれる。しかしキッツはゆっくりと手を挙げていく。


激しい頭痛に動くことができない。


焦ったようにブレードを閉まって駆け寄ってくるミカサ。



「エレン!アルミン!姉さん!上に逃げる!!」


「よせ!俺に構うな!!お前ら!!俺から離れろ!!」


「マズいこのままじゃ……」


「っ、上にも!」


「聞いてください!!巨人に関して知ってることを話します!!」



皆焦っているのに、私はなんでこんなに静かなんだろう?


エレン……



「魅也…!?」



映像が流れてくる。エレンがグリシャに注射を打たれる前だ。


エレン、守りたければ戦って。


戦わないと……勝てない。



そっと触れていたエレンの頬から伝わってきた朧気な光景。グリシャさんが言っていた。


早く思い出して、















『この力を支配しなさい』



「!!?」















大砲の音。



突風。



熱風。



鉄の香り。





「「「うわあああああああああ!!!!!!!」」」





悲鳴。




真っ赤な光景に見えたのは、上半身しかない大きな人体模型に守られている私達だった。









私は立ち上がると、額を押さえる。


重い……



「姉さん!?」


「どうしたんですかその髪!?」


「目も赤い……」


『………』



一気に言わないで。



「オイ!?大丈夫かお前…ら……」



エレンがまたうなじから出てきたんだろう外側から帰ってきた。



「お前どうしたんだ!?」


『エレンの方が驚くことやってると思うんだけど……』



アルミンから説明してもらった限り、目が真っ赤で髪が真っ白……というより銀白色らしい。
頭痛と関係あるの?あの薬と関係が……ってそれどころじゃない。



「とりあえずこいつから離れるぞ!巨人の死体と同じで蒸発する!」



エレンに腕を引っ張られる。何せうまく動けない。よろけて彼の胸に収まると呆けたが、誰も何も突っ込まなかった。



「まだ様子を窺ってるのか、放心してんのか……今のところは駐屯兵団に動きは見られないが、最終的には攻撃を続行するだろう。こんなもん見せた後で会話できる自信はオレには無い」



エレンは首にかけていた鍵を取り出して話を続ける。
……あれ?その鍵……



「ただ一つだけ思い出した。地下室だ!!オレん家の地下室だ!!そこにいけばすべてわかるって親父が言ってたんだ」


『………』


「オレがこうなっちまった原因も親父だ。地下にいけばおそらく巨人の正体がわかるんだ」



エレンはそこまで言って急に黙る。クソッ!!と言いながら私達を守っている骨を叩く。



「エレン?」


「だとしたら何で隠した?」



エレンにはグリシャさんの考えていることがわからないのだろう。私もあの時に話したけど、あんな少ししか言葉を交わしてないのだ。わかるはずもない。



「その情報は何千人もの調査兵団が命を落としても求め続けた人類の希望ってやつなんじゃないのか?それをオレん家の地下室に大事に仕舞ってたっていうのか!?何考えてんだ!!」


「エレン」


「そもそもオレ達を5年もほっといてどこで何やってんだよ……」


「エレン!今は他にするべきことがある」


「……あぁ」



そのうちにわかるんじゃないのかとは思ったが言葉としては出なかった。きっとそのうちでは遅い。


エレンは何かを睨みつけるような目付きで話し始めた。



「オレはここを離れる」


「どこに?どうやって?」


「とりあえずどこでもいい。そこから壁を越えて地下室を目指す。もう一度巨人になってからな……」


「………」
「そんなことできるのか」


「自分でもどうやってやってるのかわからん、でも出来るって思うんだ。どうやって自分の腕を動かしているか説明できないようにな」


『さっきはミカサ達を守ろうとしたからあれだけしかできなかったんだ』


「ああ。無意識に砲弾を防ぐことだけを考えたからだ」



エレンは悪いやつの顔をしながら話しているが随分と顔色が悪い。



「エレン鼻血が…!」


「今はそんなこと言ってられねえだろ。だからオレに2つ考えがある」



エレンは鼻血を拭いながらそういう。
私は鍵をじっと見つめ続けていた。



「一つはお前らを置いていく。オレを庇ったりしなければお前らは命まで奪われない。もう既に迷惑かけちまったがオレはここからは単独で動こうと思う」


「そんな!」


「エレン!私も行く」


「ダメだ。置いていく」



またいつもの喧嘩だこんなところでもやらかすとは……



「私が追いつけなければ私に構う必要はない。ただし私が従う必要もない!」


「いい加減にしろって言ってんだろうが。オレはお前の弟でも子供でもねぇぞ」


『いい加減にするのはエレンだよ』



体辛いんだから早く終わらせて……
そう思いながらエレンの胸の中にいたままの私は起き上がる。








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