CuteなSugar

□恋をした
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櫻葉【恋をした☆2】CuteなSugar




刹那、校舎からは悲鳴が上がり、背後からは滝沢の『ヒュ〜』という冷やかしが聞こえてくる。



「しょ、しょーちゃん?」



「ちっ、ちがっ、、!」



そう言いながらも、やはり見せたくなくて身体が離せない。

こんな姿を誰かに見られるなんて…。
いや、男同士だったら日常ではあるし、意識するほうがおかしいとはわかってるけど。



「雅紀、こんなとこで脱ぐなよ。
誰かに見られるだろ?」



俺は、誰にも聞かれないように、小声で雅紀の耳元で忠告したんだけど、雅紀ときたら、俺の言いたいことが微塵も伝わらなかったみたいで、あっけらかんと言ったんだ。



「しょーちゃん?おっぱいないよ?オレ…」



背後から、滝沢の爆笑が聞こえてくる。

クソー、、、だけど見せるわけにはいかない。

足元にあったバッグを手繰り寄せて、中からスポーツタオルを取って羽織らせた。



「部室で着替えてこいよ…」



「うんっ♪ちょっと、待っててね♪
タオル、、しょーちゃんの匂いがする♪」



「あっ!汗臭いかも…ごめん!」



「しょーちゃんのっ♪」



滝沢がいるのに、雅紀は無邪気に俺のタオルに顔を半分埋めて笑顔を作ると、スキップしながら部室へと行った。


だから、そういう可愛い仕種をさ?
俺以外の人がいる前でするなよ…。

二人の関係を知られるのが恥ずかしいというより、可愛い雅紀を知られることが何より嫌なんだということを強く意識していた。



「サクショー、ずっと、謝ろうと思ってたんだけど…」



雅紀が部室に入ったのを見届けて、滝沢が切り出してきた。
あの、ゲーセンから出てきて会った日のことを気にしての謝罪だった。



「あぁ、事実だし、隠すつもりもないし。」



「あれから、相葉くんにさ?
“しょーちゃんを悪く言わないで”って言われたんだ。」



「雅紀が?」



「“イチャイチャしたくて手を繋いでるんじゃないから”って。
相葉くん、、事件から、外を歩くのが怖かったんだって?
からかって悪かったと思ってさ。」



雅紀がそんなことを?

今でこそ、サッカー部の連中とも少しは話せるようになった雅紀だけど、この前までは、極度に引っ込み思案で、まさか雅紀が俺の知らない所で滝沢とコンタクトを取っていたとは思いもよらなかった。


滝沢への言葉を探していたら、校門前にスポーツカーが止まって、中からひとりの男性が、これでもか!と足を高く上げてから降りてくる。

サッカー部のOBの東山先輩だ。



「お?来た♪じゃ、サクショー、またな♪
お前らのおかげで、俺も変われたんだ!」



滝沢は東山先輩の元へと嬉しそうに走っていく。

それを見送っていたら、後ろから両目を塞がれた。



「しょーちゃん、何見てんの?」



「お前、それを言うなら、“だーれだ?”じゃねえの?
何見てるって、何も見えねぇけど?」



「ふふっ、、そうだよねっ!
しょーちゃん、頭いいなぁ♪」



滝沢と話したことで、感慨深くなっていたけれど、振り返って雅紀を目にした瞬間、さっきまでの自分の動揺が蘇ってきた。


シャツの襟元から覗く鎖骨や喉元…それから、額の汗のせいで、濡れた前髪。

何もかもが、今日、初めて見たような錯覚に陥るほど、俺の心を揺さぶって、落ち着こうとすればするほど、鼓動がせわしなく身体の中へとこだまするように響いた。



「ボタン…」



急いで着替えてきたからだと思うけど、中途半端に身を隠すように留められたボタンのせいで胸元が露になったままだ。



「あっ///部室、暑かったから…」



俺の視線に気付いたのか頬を染めて、言い訳するようにボタンに伸ばした手を遮って、俺が残りを留めた。



「あまり見せんなよ…」



「でも、、オレ、おっぱ、、、」



「おっぱいないのはわかってるよ!
そういうことじゃねーから!」



鈍感すぎる雅紀…。

それとも初(うぶ)なのか、自分の魅力を知らないのか。。。



「しょーちゃん、怒ってるの?」



「怒ってねーし…」



怒ってないけど、何故か笑えないし、目を合わせることが出来なかった。


俺の中に生まれた新たな感情に、自分自身で戸惑っていたんだ。





…つづく…
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