CuteなSugar
□胸いっぱいの愛
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櫻葉【胸いっぱいの愛☆2】CuteなSugar
そして、オレの不安は的中する。
朝、駅まで走る時に、しょーちゃんの手を引っ張るのは恥ずかしくないけど、帰り道に繋ぐ手は、全く別物だったんだ。
だから、恥ずかしくて、しょーちゃんにも そう言った。
しょーちゃんだって ちゃんとわかってくれたんだ。
だけど、、、やっぱり、時々怖くなる。
そんな時は、しょーちゃんの制服のブレザーの裾を掴むんだけど、しょーちゃんはすぐに気が付いて 優しく笑うと手を取ってくれた。
それは、すごく嬉しくて…。
好きな人と手を繋ぐことが、すごく嬉しくて…。
でも、しょーちゃんのヒーローの噂が落ち着く頃、今度はオレたちの噂が始まりだしたんだ。
元々、仲が良すぎてからかわれることはあったけど。
今度の噂は違った。
からかわれるとかじゃなくて『ガチだ!』って感じで、ヒソヒソされることもあった。
だから、なるべく、怖くても しょーちゃんのブレザーの裾を掴まなくてすむように、しょーちゃんに迷惑がかからないようにやってきていた時だった。
その日は、職員会議があって、全部の部活が休みになった日だった。
一斉下校のため、駅までの道程にたくさんの生徒が歩いていたし、見ていた人も多かったと思う。
いつもと同じように しょーちゃんと一緒に駅まで歩いていたら、ゲーセンからサッカー部の人たちが飛び出してきた。
オレはビックリして、慌てて しょーちゃんのブレザーの裾を引っ張るように掴んだんだ。
「なぁ、お前らってガチでデキてんの?」
そう言ってきたのは、しょーちゃんと同じサッカー部の滝沢で。。。
一年の時から髪を金髪に染めてて、学校の近くに住んでる、いわゆる都会っ子だった。
オレはちょっとビビってて…しょーちゃんに迷惑はかけたくないけど、何も言えなかった。
「そうだけど?なんかある?
雅紀、行こう…」
しょーちゃんは、否定せずに堂々と言い放つとオレの手を握りしめてきた。
しかも その手をぶんぶん振りながら楽しそうに駅まで歩き出したんだ。
その手は電車に乗って隣同士に座ってからも離されることがなくて、ジットリと汗ばんでいた。
「しょーちゃん、、ごめんね。オレのせいで…」
「なんで謝るの?事実なんだから、別にいいじゃん。」
「で、でもっ!オレが怖いからとか言えたじゃん?」
しょーちゃんの気持ちは嬉しかったけど、それを受け止めるには、まだまだ子供で・・・。
もっと言うなら、相手がしょーちゃんじゃなくて、女の子だったとしても、オレの気持ちは同じというか、、、。
好きとか、付き合ってるとか、そういうことを堂々と言えるだけの勇気がない弱虫だったんだ。
「雅紀?お前が考えてるより、俺は本気だって言ったよな?
俺は隠すつもりも誤魔化すつもりもないよ。」
「でも・・・・」
「それとも、、、
雅紀は、男の俺と付き合ってるって、恥ずかしい?
雅紀が恥ずかしくて隠したいなら、そうするけど。」
「ち、、違うっ!
そーじゃないよ。。。」
「なら、良かった♪」
しょーちゃん、、そーじゃないよ。。。
ただ、そんなに一度に大人になれないよ…。
それに…興味本意の噂も嫌いだった。
しょーちゃんのことを悪く言われるのもイヤだった。
だけど、結局はオレの弱虫が悪いんだ。
次の日…。
学校に行きたくなかった。
もっと酷い噂が広まってるかもしれない。
だけど、ずっと休んでいたし、休む理由もないし、簡単に休ませて貰える家でもない。
朝、いつものように しょーちゃんちに迎えに行くと、珍しく、しょーちゃんは着替え終わってて、玄関に座るとオレに靴下を渡してきた。
「雅紀ぃ、、靴下、まだなんだ♪」
「もぉ・・・・。」
嬉しそうに素足を見せてくる しょーちゃんに靴下を履かせた。
時間に余裕があったから、駅までゆっくりと歩いていたけど、足取りは重たくて、ずっと無言だった。
いつもの電車に乗ってからも、しょーちゃんと何かを話せる気分じゃないまま、オレは外ばかり眺めてた。
「雅紀?お前、いくら持ってる?」
「えっ?」
「早くっ!」
電車が次の停車駅のホームに滑り込み始めた時だ。
オレは財布を確認して『7千円ぐらい』と答えた。
「早く、財布しまえっ!行くぞっ!」
電車のドアが開いて、ホームから一斉に人が乗り込んでくる。
しょーちゃんに強く手を引っ張られながら、乗り込んでくる人を掻き分けるように電車を降りたんだ。
「しょーちゃん?」
「どっか行こうか?」
「どっかって?」
「駆け落ちの練習♪」
しょーちゃんはオレの手を引いたまま、楽しそうにホームの階段を駆け上がると、乗り換え線を調べ出した。
…つづく…