CuteなSugar

□ヒロイン
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櫻葉【ヒロイン☆2】CuteなSugar





それから、10日ほど過ぎた頃だと思う。


雅紀が『付けられている』と言った日から、何事もなかったし、雅紀も何も言わなかった。

だから、俺もスッカリ忘れていたというか、深く気にしてなかった。
付けられていると言ったって、雅紀は男だし、力だって強いし、足だって速かったんだ。


こんな言い訳を重ねても、本当はもっと話を聞いて、もっと慎重になるべきだったと、、この先、ずっと後悔はすることになったんだけど。



やはり、部活で遅くなって、雅紀が先に帰ってしまったから、家までの道程をチンタラ歩いていた。

途中、歩道を歩くより、公園を突っ切ったほうが近道になるからと、そちらへ足を向けた。

小さい時から、よく遊んできた公園で、俺がいじめられてると、いつも雅紀が助けてくれた公園だった。

小さい頃は、お日様いっぱい浴びてた公園も・・・少しずつ形を変え、今では“近道”に利用するぐらいだったけど。


その時、どこかから、植木がガサガサする音と、呻き声みたいなものが聞こえてきた。

最初は、酔っぱらいが吐いてんのかと思って、知らん顔して通り過ぎようとしたんだけど。

あまりにも苦しそうな呻き声に、何か嫌な予感がして、声を頼りに人の気配探してみると、我が目を疑う光景が目に飛び込んできた。



「てめぇっ!何、やってんだよっ!」



暴漢だった。

そんなのドラマや架空の話でしか知らなかったし、まさか直面するとは思ってもみなかったけど、咄嗟に叫びながら駆け寄っていく。


俺の声に気が付いたのか暴漢は素早く立ち上がると、向こうへと逃げていった。

その後を追い掛けようとしたけど、目の前で倒れてる被害に合った人をひとりにしておけなくて、諦めることにした。



「君、だいじょ、、・・・雅紀っ?」



「しょ、、、」



雅紀はガタガタと震えていて、恐怖のあまり声が出せないような状態だったんだと思う。



「雅紀っ!雅紀っ!しっかりして!」



突然のことに、何からしたらいいのか、わからなかい。

取り合えず、雅紀を背中におぶるように担ぐと、鞄を捨てたまま家に走っていた。


雅紀を連れたまま、自分の家の玄関を入ると、父親の靴がある。



「ママ!雅紀の父ちゃん呼んで!
パパ!ちょっと、俺の部屋に来て!」



自分だけでは解決する能力もなかったけど、母親にはいきなり知らせないほうがいいと思った。
雅紀の心の問題もあるし、母親はショックを受けやすいから。

部屋に連れてきて、ベッドに寝かせ電気を点けると、さらに驚愕する。



「雅紀、大丈夫?」



「ん、、しょ、、、」



「わ、わかったから、喋るな。」



制服のシャツが破れ、ズボンも土や草がついたままだったけど、それだけじゃない。


殴られてる…。


口の端から血が出ていて少し腫れてるし、顔には引っ掻き傷みたいなものまであった。

怒りのあまり、涙がドバドバと溢れて止まらなかった。


父親が部屋にやってきて、簡単に事情を説明し、雅紀の様子からすぐにわかってくれたようだった。

それからは、雅紀の父親もきて、雅紀の様子を確認して、『警察に連絡するから、少しこのままで…』と言われ、俺と雅紀は部屋に残された。



「雅紀、、ごめんな。」



「しょ、、ちゃ、、、あり、がと」



唇を震わせてる時まで、一番に御礼を口にするのは、小さい頃から変わってない。
雅紀の家では、それが当たり前だったけど、こんなときにそんなこと言わなくたっていいんだよ。

ベッドの下に座って、雅紀の手を取ると、手にも小さい傷があって、ズボンからはみ出たシャツの中の素肌にも、擦り傷や引っ掻き傷みたいなものがあった。


見てるだけでいたたまれなくなって、俺は雅紀の手を取ったまま、ベッドに突っ伏してまた泣いた。


それから、警察がやってきて、雅紀が事情を聞かれてたけど、まだ上手く喋れないみたいだった。

警官が『君も男なんだからさ?』と言ったのを聞いて、ふざけんなって後ろから殴りかかろうとしたら、雅紀の父ちゃんに肩を掴まれた。


雅紀の父ちゃんの手が震えてて、俺も悔しかったけど、雅紀の父ちゃんの言葉で、悔しいのは俺だけじゃないことや、俺がまだまだちっぽけな存在だということを思い知らされた。



「すみません…
何があっても、雅紀に人を傷付けることはするな、と教えたのは私です。
息子を責めないでやって下さい。」





…つづく…
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